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「ネットはなぜネガティブなのか」を謝罪マスターと考える 竹中功×おおつねまさふみ対談第3回otsuneの「燃える前に水をかぶれ」(2/3 ページ)

» 2018年07月23日 16時58分 公開

拡大した観測範囲

おおつね 「気にしないで」って言うと直感的に納得感がないかも知れませんね。どっちかと言うと「インターネットであなたの観測範囲が広がりましたよ、それこそ1万倍ではきかないぐらい、いろんなものが見えるようになりましたよ」と。インターネットが持つ大きな意味を、きちんと理解してもらえたほうが。

竹中 メリットのほうもデカいですもんね。

おおつね 動物としてのヒトの本能って、村とか集落で最大100人ぐらいの単位で暮らすのに最適化されてきたんじゃないかと思っているんですね。例えば40人ぐらいの学校のクラスで、自分の悪口を言ってるやつが一人いたらすごく敏感に察知できますよね。で「ごめんな俺なんか悪いことした?」とか「何でお前そんな俺に対して怒ってるんだ! むかつくな」って喧嘩になったり(笑)。

竹中 あるなあ、あるある。

おおつね 結局、自分が褒められていることよりも、けなされたり文句言われたりすることのほうに敏感にできているんですよ、人間って。その本能のまま生きてきたところに、この10年ぐらいのネットの進化で、40人から一気に4万人の声が聞けるようになったわけじゃないですか。でも本能は変わらないので、4万人40万人のなかでひとりでも悪口を言ってる人がいたら同じように反応しちゃうわけですよ。もちろん「だから気にするな」ってのは違うと思うんですけど、頻度がものすごく上がったことは自覚しないと対処に疲れちゃう。

竹中 それでも気は強くならないとだめですよね。多かれ少なかれ自分への文句とかが聞こえてくるんですから、それにへこたれる人はへこたれますよね。

おおつね 動物としての人間って、良い出来事にはあまり敏感にはできてないんですよね。例えばサバンナで狩りをしてて歩いてるときに、ガサッと物音がしたら猛獣に襲われて殺されるかもしれないって思って、すごく敏感に警戒する。けど、木に食べられる実がなっていても、ちょっと見えにくいところにあると見逃してしまう。見逃してもすぐには死なないから。

竹中 そういう本能みたいなところは、ちゃんと残ってるんでしょうね。

おおつね ネットも社会でものすごくいいこと、自分が発表したことが面白い面白いって言ってくれる人が 何万人も増えましたよっていってもあんまり実感が沸かないんだと思います。

竹中 褒められることってなかなかないから、いらんことだけ聞こえてきて落ち込むんですよね。僕もそんな経験ありますよ。でもそうやって、いろんな人と出会えるのも確かですから、インターネットをもっといい意味で使おうやと。

おおつね マスコミとか発信力のある人だけに握られていたものが、自由に使えるようになったっていう状態だと考えればいいと思いますね。

竹中 口先だけの悪口もあるし、本気で考えてくれた悪口も含めていろんな物が目の前にやってきてる。そういう状況とどう付き合っていくかというのは、まだまだ僕ら慣れてないですけど、慣れていかないとあかんし、慣れていきたいですよね。

おおつね 今のところはまだ、何年何十年と見続けてきた人だけが知っている感覚なのかも知れませんね。ネット上の文化の流れと嗅覚とか経験で何となく身につけてきたような。

竹中 それは漫才の芸と一緒ですねえ。NSC(吉本総合芸能学院)出たての子も一生懸命ネタ作ってくるけど、中川家くらいになってきたらね、もうその日その場所そのお客さんでネタも変えながらやっぱり笑かして帰るわけじゃないですか。それってもちろんマニュアル化もできないわけで。

おおつね ネタとしてはものすごく面白いし、あるところでは受けたんだけど、高齢の方ばっかりのとこだと全然当たんなかったとか。プロの芸人さんは、いろんな失敗とかを積み重ねていくんでしょうね。

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竹中 そういう意味で言うと、僕らはインターネットでまだそこまで深い長い経験がない。成功体験もなければ失敗もしてないのかもしれないですね。だから、いざ自分が発信する側になったら、ちゃんとネットの特性を理解していかないと翻弄されますよね、まだまだ。

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