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サマータイム対応に、貴重なIT人材を費やすべきなのか(2/3 ページ)

» 2018年09月19日 07時00分 公開
[高橋睦美ITmedia]
photo 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)客員研究員の楠正憲氏

 今議論の対象となっているサマータイム。そもそもの始まりは、第一次世界大戦時に何とか省エネ、資源を節約しようと考えられたことがきっかけで、日本国内でも戦前からたびたび議論のテーブルに上がり、GHQの指示で1948年〜51年に導入されていました。楠氏は「実は日本では、夏時間的なものはその前から存在している。江戸時代の不定時法だ。和時計は不定時法に対応している。機械にできることがITにできないのは何たることだ、と個人的には思う」といいます。

 楠氏によると、実は「日本のスマートフォンは、GHQが実施していた当時の夏時間のデータを保持している」そうです。このため、戦後すぐのサマータイム導入時に生まれた人の誕生日が1日ずれるというバグも時々起こっているといいます。「サマータイムを導入するなら、このタイムゾーンデータベース(tz database)に新しいエントリを付け足して、全部OSをバージョンアップしていかなくてはいけない」(楠氏)

 既にワールドワイドで製品やソフトウェアを開発している企業は、「プロトコルの中で時間を表す際はUTCで書く」といったしかるべき作法に沿って開発を行っています。

 楠氏は「夏時間の導入やルール変更は、世界を見れば頻繁に起きていることだし、対応のためにやるべきことは分かっている。ちゃんと世界でソフトウェアを作っている企業なら、とっくに対応していて当たり前のこと。本来ならば、夏時間導入でこれだけ大騒ぎになるのは恥ずべき状況だと思う」と述べました。「米国で作られたソフトウェアだと、日本語の漢字表記が化けるようなものかもしれない。自分の国で行われていないことに対しては、プログラマーはどうしても鈍感なものだ」

 従って、技術的にはサマータイムに正しく対応したソフトウェア・システムを開発するのがスジ。とはいえ、実際に対応するのは「結構しんどい」(楠氏)というのも事実です。

 全ての発注者がシステム仕様に「夏時間に対応すること」と書いているわけではなく、どのように改修するか、誰がその費用を負担するかは見えていません。また、仮に改修したとして、特にコンシューマー向けの端末では最新のOSにアップデートする人ばかりとは限りません。リリース前には、改修が適切に行われているかのテストも実施する必要があり、悩みは尽きない状況です。

あちこちに潜む未対応機器の洗い出し

 その後のパネルディスカッションでは、さらにいくつかの「悩ましい」事例が出てきました。

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