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あなたはアンドロイドを殺せるか? 「Detroit: Become Human」で考えるAIと人間の未来(1/3 ページ)

» 2018年10月03日 08時00分 公開
[村上万純ITmedia]

 「AI(人工知能)に自我は芽生えるか。感情はあるか」──これは、SF作品で昔からよく見られるテーマだ。こうした空想を楽しめるのがSFの醍醐味(だいごみ)の1つだが、「AIはコンピュータなのでそんなことを議論しても意味がない」「汎用人工知能の実現は難しいので、人間のように意思を持つことはできない」と考える人もいる。

デトロイト 「Detroit: Become Human」公式サイトより

 AIに感情があるかどうかは分からない。ただ、私たちはAIにどうしようもなく感情を揺さぶられる瞬間があるかもしれない。プレイステーション 4向けソフト「Detroit: Become Human」(デトロイト ビカム ヒューマン。以下Detroit)をプレイし、そう感じた。ゲームAIの研究・開発者であるスクウェア・エニックスの三宅陽一郎さんなどの識者もゲーム媒体などでDetroitの奥深さを語っている。

 舞台は2038年の米デトロイト。AIやロボット工学が高度に発展し、人間そっくりのアンドロイドが製造され、人間は過酷な労働から解放されようとしていた。一見豊かな社会に思えるが、アンドロイドに職を奪われた人々が「反アンドロイド感情」を持つなど、両者のあつれきは無視できないものになってきている。

デトロイト ゲーム画面(公式YouTubeより)

 プレイヤーは、3体(人)のアンドロイドを操作し、それぞれの物語を体験していく。各エピソードで下す決断、発言、行動によってシナリオが分岐し、物語の展開や結末が変わっていくマルチエンディング方式で、膨大なシナリオ分岐がある。思わず操作キャラに感情移入してしまう重厚なストーリーも魅力だ。

 アンドロイドに感情があるのかは分からない。でも、そんなアンドロイドにわれわれが感情移入してしまうのはなぜなのか。

(※以下、ゲームのネタバレがあります)

人間は「人間に見えるもの」に弱い

 プレイヤーが操作するキャラはアンドロイドだが、そのリアルな見た目(主要キャラは実際のキャストの顔を再現している)や言動は人間と区別が付かない。ゲーム内では「合衆国アンドロイド法」により、アンドロイドは人間と容易に区別できるよう、側頭部のLEDライトと専用衣服の装着が義務付けられている。だが、ゲームを進める中でこの法律を破り、人間に扮して生きていくキャラクターもいる。

デトロイト 公式YouTubeより)

 メディアミックス作品「BEATLESS」では、「アナログハック」と呼ばれる概念がある。これは、人間の弱みや隙につけ込んで不正アクセスに必要なパスワードなどを盗む、ソーシャルエンジニアリングと呼ばれる手法に近い概念を持つ造語。

 作中では「『人間のかたちをしたもの』に人間がさまざまな感情を持ってしまう性質を利用して、人間の意識に直接ハッキング(解析・改変)を仕掛けること」という設定で、人型ロボットが人間にアナログハックする場面も描かれる。つまり、人間は「人間に見えるもの」に弱い。遠くない将来、この“人間が持つ脆弱性”が悪用される可能性もあるだろう。

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