人工知能、ロボットは職業にどのような影響を与えていくのか、どう使っていけばいいのか。これからの働き方を考える最新トレンドを追う連載の第3回。
RPA(Robotic Process Automation)が「ソフトウェア・ロボット」と呼ばれることがあるように、いま「ロボット」という言葉は、何かを自動化するソフトやシステム(特にAI技術を活用した高度なもの)にも使われるようになっています。ただやはり多くの人々は、「ロボット」という言葉から、物理的な筐体を動かす存在を想像するでしょう。工場では「産業用ロボット」という形で、半世紀近く前からロボットの導入が進んでいますが、私たちの身の回りにあるロボットといえば、まだPepperやルンバ、aibo程度です(それでも高度な技術が使われている製品ですが)。私たちが職場で、ロボットと肩を並べて働く日は来るのでしょうか。
実はいま、「コボット」と呼ばれるロボットが急速に普及しつつあります。これは「Collaborative Robot」を縮めた言葉で、日本語では「協働ロボット」と訳されることが多いです。産業用ロボットだって人間と「協働」してくれるのに、なぜわざわざコボットという新しい言葉が使われているのか。それはこのロボットが、「人間と同じ空間で作業しても危険ではない」という大きな特徴を持っているからです。
上の映像は、トヨタのグローバルニュースチャンネルで公開されている、「JPN TAXI」(ジャパンタクシー)生産ラインの様子です。冒頭に少しだけ産業用ロボットが映り、あとは人間の作業員が働くラインが紹介されているのですが、産業用ロボットが稼働するラインにはひとつの特徴があることに気づかれたでしょうか?
その特徴とは、「ラインがフェンスで守られていること」です。産業用ロボットは大型であることが多く、アームがぶつかれば、人間の作業員は大けがを負うことになります。もちろんさまざまな安全対策はなされているものの、ロボットが働く場所に人間が近づかないのが一番ということで、こうしたフェンスが張り巡らされているわけですね。
では次に、こちらの映像をどうぞ。
これは産業用ロボットのトップメーカーであるファナックが開発したコボット「CR-35iA」のデモ映像です。同じく自動車の生産ラインをイメージした内容になっていますが、こちらは人間とロボットが同じ場所で、フェンス抜きで「協働」作業をしています。これがコボット最大の特徴のひとつで、周囲にいる人間の安全が守られるよう、さまざまな工夫が施されています。デモに登場する「何か(特に人間)に接触するとすぐに動作を止める」というのもそのひとつ。そのために各種のセンサーを搭載し、周囲の状況を把握できるようになっています。
いまファナックだけでなく、米国のRethink Robotics(ルンバで知られるiRobotを創業したロドニー・ブルックスが立ち上げた別の企業)や、デンマークのUniversal Robotsなど、さまざまな企業がこのコボットの開発・販売に乗り出しています。そのため急速に市場が拡大しつつあり、米国ロボット工業会(RIA)は、2025年までに同市場が130億ドルに達すると予測しています。彼らによれば、現在コボットは全産業用ロボットの3パーセントに過ぎないものの、2025年には34パーセントを占めるようになるという予想。実に産業用ロボットの3台に1台が、人間と肩を並べて働くようになるわけですね。
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