ITmedia NEWS > AI+ >
ITmedia AI+ AI活用のいまが分かる

「ロボットが職場にいる生活」を現実にする「コボット」ロボ材活用最前線――AIが変える働き方と経営(3/3 ページ)

» 2018年10月26日 15時26分 公開
[小林啓倫ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

人間の新しい役割

 こうしたコボットが普及した職場で、人間の役割はどうなるのか。先ほど紹介したロドニー・ブルックスのTEDスピーチでは、こんなセリフが登場します。Baxter設定を1時間でできるようになった作業員、ミルドレッドを引き合いに出し、

 “私たちはミルドレッドのような労働者を「ライン作業者」から「ロボット訓練者」にしたいのです。”

 とブルックスは訴えます。決められた作業を繰り返す存在から、コボットがどこに導入できるかを考え、設定し、人間にしかできない・人間がすることでより品質をあげられる作業に集中する存在へ。そうすることで、前述のVoodoo Manufacturingのような効果を実現することに貢献できるでしょう。もちろんそのためには、経営陣が必要なサポートを提供しなければなりませんが、「未来の働き方」のモデルのひとつになるはずです。

 ただ、生まれるのはそうした前向きな仕事ばかりではありません。専門家から、次のような指摘が出ています。

 セキュリティ企業IOActiveの研究者は2月に発表した論文「Hacking Robots Before Skynet」の中で、複数の大手メーカーの家庭用ロボットや産業ロボットを検証し、50件近い重大なセキュリティ問題を発見したと伝えていた。中でも生産現場などで人間の作業をアシストする共同作業ロボット(コボット)にスポットを当て、8月22日のブログでコボットを遠隔操作するデモ映像や、技術的な詳細を公表した。

 と記事では書かれており、次のような「実際にエクスプロイトコードを実行し、設定を変更してアームを動かせることを示したデモ映像」を紹介しています。

photo コボットによるエクスプロイトデモ

 今後コボットが普及し、産業用ロボットの3台に1台を占めるようになれば、これを標的にするハッカーも実際に登場してくるでしょう。そうしたハッキングからコボットたちをどう守るのか、サイバーセキュリティ対策の担当者を採用して考えさせるということも一般的になっていくかもしれません。

 そうした脅威がありつつも、コボットは着実に活躍の場を広げていくはずです。そしてAI技術の進化に合わせて、急速に「賢く」なることも期待されています。「君の下にコボットを1台つけるから、彼/彼女に任せられる仕事を考えといて!」と上司に命じられる日も、そう遠くないのではないでしょうか。

著者プロフィール:小林啓倫(こばやし あきひと)

経営コンサルタント。1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院地域研究研究科修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米Babson CollegeにてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える! 金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『テトリス・エフェクト 世界を惑わせたゲーム』(ダン・アッカーマン著、白揚社)、『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(サリム・イスマイル著、日経BP社)など多数。


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.