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「ロボットが職場にいる生活」を現実にする「コボット」ロボ材活用最前線――AIが変える働き方と経営(2/3 ページ)

» 2018年10月26日 15時26分 公開
[小林啓倫ITmedia]

コボットのもうひとつの特徴

 人間と一緒に「協働」できるロボットなのでコボット。なのですが、いま注目されているコボットの多くに、もうひとつの共通点があります。それは「動作を簡単に覚え込ませることができる」という点。当然ながら機種にもよるのですが、主要なコボットの多くで、プログラミングをせずに新しい動作を設定することが可能になっています。

 次の映像は、前述のRethink Roboticsが開発したコボット「Baxter」について、ロドニー・ブルックス自らがTEDで紹介しているところです。

 この映像の5分20秒あたりから、新しい作業を覚えさせるデモが行われています。プログラミングは必要なく、コボットの手をつかんで、してほしい操作をさせるだけ。他のコボットの多くでも、こうしたグラフィカルなUIや「実演する」という方法を通じて設定が可能になっています。これがいかに画期的なことか、上記の映像の続きで「工場で働いていた普通の作業員が、ものの1時間でいくつかの作業をBaxterに覚え込ませることができた」と紹介されています。つまりコボットは人間と同じ空間で働くだけでなく、誰でも操作が可能であり、簡単に別の作業をさせられるという点でも「協働」という名にふさわしい存在であるわけです。

photo Baxterの手をつかんで操作を覚えさせる

 とはいえ「産業用ロボット」と自分が一緒に働くところは想像できない、と感じられたでしょうか。それではもう少し身近に感じられる例で、コボットの効果を解説してみましょう。

 次の映像は、もうひとつの大手コボットメーカー、Universal Robotsが公開している事例です。

 ニューヨークのブルックリン地区で3Dプリンティングサービスを提供しているスタートアップ、Voodoo Manufacturingが、ユニバーサルロボットのコボット「UR10」を導入して生産量を3〜4倍に増やしたというもの。3Dプリンティングサービスは急速に拡大しており、Voodooにもユーザーからの出力依頼がひっきりなしに舞い込む中、UR10に作業の一部を肩代わりさせる様子が紹介されています。

 具体的な作業は映像でお分かりだと思いますが、出力が終わった3Dプリンターから作品が載ったトレイを取り出し、新しいトレイをセットして、プリントを開始させるというもの。簡単な作業ですが、これを効率的に、しかも休まず行うことができれば、3Dプリンターの稼働率を限りなく高められます。そしてコボットが持つ「簡単に設定できる」という特徴がここでも生かされ、一連の作業のセットアップは数時間で完了したそうです。

photo Baxter導入で3-4倍の効率に

 映像の最後では、出荷用の作業など、他にもコボットに任せられそうな作業があることが紹介されています。上記の作業だけでも、UR10の導入コストが6カ月で回収できそうだという見通しが示されているのですが、さらに多くの作業でコボットが展開できれば、より大きな効果を得られるでしょう。最終的にVoodooは、現状の作業にかかるコストの90パーセントを削減することを目指しているそうです。

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