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人工知能で「ヒット曲」難しい理由 ”良い音楽”は科学できるのかこれからのAIの話をしよう(音楽編)(4/5 ページ)

» 2018年11月08日 08時00分 公開
[松本健太郎ITmedia]

 音を立てるだけなら、人間だけでなく動物にもできます。機械ですら、例えばサーバからは低音のウォーンというファンの音が聞こえます。私たちが「音楽」と感じるメロディーと、単なる音の違いが分からなければ、人工知能としても再現できないはずです。

 深山さんは、例としてジョン・ケージという作曲家が作った実験的な楽曲「4分33秒」を挙げます。

 「この曲は、一切の音が流れていません。そのため、いろんな解釈があります。始まってから終わるまでの4分33秒の間にいろんな音を聞きますよね。ホールの外の音や、隣の人がゴソゴソする音、改めてそういう音を聞き直すと音楽になるという意見もありますし、無音も音楽だとする人もいます。そこまで拡張すると、誰かが『これは音楽だ』と言ってしまえば音楽になってしまいますが」

 音楽の定義の難しさ。これは、自動作曲の定義の難しさにも通じます。そんなときは「Composition」を考えるそうです。

 「何かしら意図を持って、いろんな音を配置していく。それが作曲をするということなんです。ジョン・ケージの例も、4分33秒を奏でる舞台を作ったことが、既に作曲なんです。ピアノの前に奏者を置いて、何も弾かないというデザインをした。そこに意図を感じるので、4分33秒は音楽になるんだと思います」

音楽

 深山さんはOrpheusを作るときも構成に苦労したと明かし、「構成とは、使っている側が欲しいと思う機能を設計すること」と説明します。

 「例えばOrpheusで、1つの曲の1番と2番をそれぞれ違う曲調にしたいと思っても、最初はなかなかできませんでした。他にも、Aメロの部分は低めで滑らか、サビになるともう少し音が飛んで広い音域を表現したい、というのも一種の構成ですが難しかった」

 5拍子や7拍子などの混合拍子や、曲の中で頻繁に拍子が変わることなどを指す「変拍子」は、今でもできていないそうです。「機能的にはできるかなと思ってやりかけましたが、なかなか手が回らなかったですね」

コピーが得意な自動作曲 まねしやすいのはどんな曲?

 Orpheusは07年にWebサービスとして公開され、約1400人からフィードバックを得るのに成功しました。公式サイトによると、これまで45万曲以上が自動で作曲されたようです。

 「こういう機能が欲しい」「この曲は良い」など、さまざまなフィードバックを受ける中で、深山さんは「当時は『〇〇風の曲調にして欲しい』という要望に応えるのが難しかった」と振り返ります。

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