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» 2018年11月09日 08時00分 公開

機械が作った音楽は人の心を動かすか 「AIで自動作曲」研究するワケこれからのAIの話をしよう(音楽編)(3/4 ページ)

[松本健太郎,ITmedia]

 深山さんは「その場その場に応じた、パーソナライズされた聴き方というのが生まれるのでは」と考えます。

 「例えばOrpheusでいえば、歌詞としてニュース記事や友人から受け取ったメッセージを入れたり、その場その場の気持ちを曲にしたりできるようになるかもしれません。自動作曲って『何か曲ができる!』だけじゃなくて、いろいろ多様に変えられる面がありますね」

 多くの曲を瞬時に作曲できる人工知能は、人間の作曲家にとっても強い味方になります。例えば、人間だけでは限界があるアイデア出しの役割は自動作曲の得意分野です。深山さんも、次のように説明します。

 「機械の強みは、反復してたくさんの曲を作れることにあります。音楽を作る側としても、アイデア出しのために1000曲ぐらい作ってくれて、ある部分とある部分をつないで別の曲を作るといった使い方もできると思います。そういう曲がいつの間にか普及しているのもあり得るでしょう」

 アイデア出しのためにとりあえず大量に出力するという発想は、以前インタビューさせていただいた、AIコピーライター「AICO」の開発に携わっている静岡大学情報学部行動情報学科の狩野芳伸准教授と、「美魔女」という言葉を生み出した編集者の山本由樹さんの対談でも出てきました。

アイコ AIコピーライター「AICO」(公式サイトより)

 自動作曲システムが大量の音楽を生み出し、それを基にプロの作曲家が新しい音楽を編み出していくという世界は、ものすごく豊かな音楽文化が生まれそうな印象があります。

 「作曲家のツールを増やす方向にしていきたいし、実際そうなっていくと思います。作曲家をなくそうとしたところで、人が作曲するという行為は止めようがないでしょう。カメラが登場してカメラ芸術という新しい芸術が生まれたように、自動作曲の使い手が登場してもおかしくありません。こういう学習データで、こういう曲が自動で作れるようになる、という発見も出てくるでしょう。そういう自動作曲を使いこなす新しい作曲家も生まれるかもしれません」

 ただし、自動作曲で生み出された曲について「人間が作っていないから人間味がない」と捉える人もいるでしょう。そうした意見に対して、深山さんは「確かに作ったのは機械ですけど、人の心に届くような音楽をどうやって作るかを考えています」と話します。

 「もちろん自動化しやすい所から自動化していきますけど、あくまで外堀を埋めていって、最後に残る自動化できないものを際立たせたいだけです。一見、どんどん無味乾燥にしているように見えるかもしれませんが、自動化できるところを詰めていって、残った部分を大事にしようと考えています。自動作曲でいろいろな音楽を作れる分、愛着を持てるようなものができるとうれしいですね」

 自動作曲を研究する上で、こうした「機械が作ったものは味気ない」と考える人たちとの対話は重要になるかもしれません。

自動作曲とAIの関係、この先どうなる?

 Orpheusを自動作曲システムと表現している深山さんに「自動作曲システムを人工知能と表現していいのでしょうか?」と聞いたところ、「いやぁ、どうなんですかねぇ……」という控え目な反応が返ってきました。

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