最初に考えたいのは「作業の効率化」だ。何らかの作業の一部をAIに肩代わりしてもらうことで、作業する人間の負荷を減らしたり、苦手な作業を代行させたりできるようになる。
例えばコールセンターでは、(1)AIが電話をかけてきた消費者とオペレーターの会話から問い合わせ内容を把握し、(2)これまでの対応内容データベースを検索して適切な回答案をオペレーターに提示する、という取り組みがある。これなら、経験に乏しい新人オペレーターをすぐに現場に出すことも可能になる。
これを発展させ、AIに作業全体を担当してもらう「作業の代替」を目指すこともできる。
例えば、ECサイトなどに常駐するチャットbot。ユーザーからの問い合わせをまずはチャットbotに応答させ、必要があれば人間のオペレーターにつなぐという流れだ。これで、問題の一次切り分けを行う受付窓口が不要になる。企業はチャットbotでは処理できない複雑な問題に対応させるオペレーターのみを配置するだけでよくなる。
2番目のゴールは「従来価値の高度化」だ。これはAIに作業の一部もしくは全体を担当させることで、従来提供していた価値をより良いものにすることを指す。
ここでは、従来価値を向上させるための“3つの方向性”を示したい。まずは「スピードを速くする」こと。
例えば金融機関を中心に、膨大な取引データの中から不正な取引を検知するAIが活用されている。人間でも、データをひっくり返してしらみつぶしに調べれば、怪しい取引を発見できるかもしれない。
これはなかなか骨の折れる作業だが、AIなら大量のデータから瞬時に不正を発見できるというわけだ。これによって犯罪を未然に防いだりすることで、顧客に提供する価値を高められる。
次に「精度を上げる」という方向性だ。先ほどコールセンターの例を挙げたが、回答案の検討をAIに任せると、AI自らがより良い回答案を学習していくことで内容の精度向上が期待できる。
また一部のアプリケーションでは、人間の音声から感情を分析する機能が実現されている。怒っている相手には謝罪の言葉を先に提示するなど、クレーム対応などに活用されている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR