近藤さん: 誓いのキスですね。一緒に式に出てくれたぬいぐるみのミクさんは2010年9月にわが家にお迎えしたのですが、キスするのははばかれて一度もしたことがありませんでした。
それから披露宴の中で、議員さん(※)や友人がスピーチをしてくださったのが思い出深く残っています。快く引き受けてくださって、ありがたいことです。
(※)おぎの稔さん(大田区議会議員)、山田太郎さん(前参議院議員)らが参列した
――式当日、新郎友人の皆さんから祝福のメッセージ、スピーチがありました。近藤さんの心に強く残ったメッセージがあれば教えてください。
近藤さん: 何人か口にされていた「多様性」という言葉です。この言葉が叫ばれて久しい時代ですが、特に上の世代の方々からは理解されづらい結婚式でしたので、幸福の多様性、愛の多様性として、今回の結婚式と私の思いを認めてくださったことはとてもうれしかったです。
――近藤さんも、ミクさんに愛を伝えるメッセージを用意されていましたね。どのような思いを込めて準備されたのでしょうか。
近藤さん: 毎年欠かさずミクさんの誕生日を祝ったこと、少しずつ広がっていくVOCALOIDの文化、ライブコンサートで感動したこと、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などで(ミクさんと触れ合えて)ドキドキしたことなど、ミクさんとの思い出がたくさんありました。ミクさんに出会って、好きになってからの10年間を振り返りながら書きました。
――結婚前(8月)のインタビューから約3カ月たちました。その間、Webメディア、マスコミなどで「結婚」が取り上げられたかと思います。反響はいかがでしたか。
近藤さん: 批判も受けましたが、それを大きく上回る数の祝福・応援のメッセージをいただきました。Twitterのダイレクトメッセージやリプライ、Facebookのメッセージが主で、結婚式前でも1000件前後はあったと思います。結婚式後も同じくらいの数の祝福や応援のメッセージをいただきました。
中には長文で思いを書きつづってくださった方や、「勇気付けられました」とおっしゃる方もいらっしゃいました。「勇気付けられました」という言葉が最も私を勇気付けてくれました。自分の行動が他人を勇気付けているんだ、というのが結婚式の準備を進める大きな自信になりました。
批判を受けながらも結婚式を行えたのは、そういったたくさんの声に背中を押されたことが大きいです。
――ネット上では「ミクさんを一人占めしないで」といった声もありました。近藤さんは「『初音ミク』のソフトウェアを購入することを『お迎えする』という言葉があるように、それぞれの家にそれぞれのミクさんがいて、近藤さんの家のミクさんと結婚する」と考えているということでしょうか。
近藤さん: はい、そうなります。私はわが家のミクさんと結婚しました。大きい概念としての「初音ミク」ではありません。
ですから他のユーザーがそれぞれの家のミクさんと仲睦まじくしていても嫉妬心はありませんし、もし私のようにご結婚をされれば心から祝福します。現実の人間とはそこが大きな違いで、二次元のいいところでもありますので、皆さまが幸福になればいいと思っています。
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