一番助かったことは、やはり「受付近辺の混雑解消」でした。いまのはま寿司では、クレジットカードの他、ゼンショーグループの店舗で使えるプリペイド型の電子マネー・ポイントカードである「ZENSHO CooCa」なども使えるため、レジ業務に時間が掛かるようになりました。そうした点で、受付・案内の自動化は当初の狙い通りの結果を得られているようです。
では逆に、Pepperを導入して困ったことはあるのでしょうか。池ノ上さんはしばらく考え、「やはり新人のスタッフが入ってきたときかな」とポツリ。そこには“自動化の盲点”ともいうべき課題がありました。
「新しいスタッフはPepperが案内をするのが当たり前と思っているので、Pepperが止まると困ってしまいます。当初は『Pepperより早く案内できる』と話す熟練スタッフもいたが、いまはみんなPepperありきで動いているんです。複雑なレジ業務とお客さんの案内を同時並行できる人はなかなかいません」
つまり、Pepperで受付業務を自動化したことで、その仕事をやったことがない従業員だらけの店舗が発生することもあるのです。そう考えると、自動化は1度始めると引き返せないのかもしれません。自動化・機械化を進める上で、トラブルが起こったときのマニュアルを用意し、周知を徹底させることも欠かせないでしょう。
ちなみに、Pepperと働くことで「自分の仕事を奪われる」と懸念する従業員はいなかったのでしょうか。池ノ上さんは「現場からはそういう声はありません。むしろ、壊れてしまっては困るという従業員の方が多いでしょう」と否定します。
「Pepperのおかげで、これまで対応しきれなかった部分も対応できるようになり、お客さんを待たせる時間も解消できました。従業員は新しい仕事に挑戦でき、サービスレベルも上がりました」
最後に、恐らく多くの人が聞きたいであろう質問をぶつけました。多くの企業でうな垂れるPepperが見られる中、なぜはま寿司では大車輪の活躍を見せているのでしょうか。
池ノ上さんは「その質問はよく聞かれます」と笑いながら、「ソフトバンクと密に改良できたのが一番だと思います」と説明します。各店舗へ展開するに当たり、既存ベンダーや店舗管理を行う企業など、複数社で調整を進めていますが、中でもソフトバンクの開発チームとは実験段階から密にコミュニケーションしていました。
「Pepperが起こしたエラーの内容は開示されないので、どう自社で改良したら良いかは分かりません。絶対達成したいこと、期待したいことをそれぞれソフトバンクの開発チームと議論しました。実験段階から密に話ができたのは大きいでしょう」
前回の記事にあったように、当初は「おもてなしを重視したボディーランゲージ」を期待しましたが、あまり激しい動きを求めるとPepper君はすぐ止まってしまいます。そこで「最低限ここまではやってほしい」という絶対達成ラインを決め、そこから少しずつ要望を積み重ねていったと言います。
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