そもそもお客さんは、Pepperが何をしてくれるのか分かりません。一見すると本末転倒に見えるかもしれませんが、Pepperの説明役として人間のスタッフを配置したのです。
その必要な準備期間を経て、池ノ上さんは「大体3カ月くらいで8〜9割の人はPepperを操作できるようになった」と言います。
自動化・無人化に対して苦労しているのははま寿司だけに限りません。例えば駅で特急券の自動券売機はガラガラなのに、有人カウンターに行列が並ぶ姿は珍しくありません。コンビニのセルフレジなどもそうですが、私たちは慣れていないもの、よく分からないものを敬遠しがちです。
こうした、自動化に対する「不慣れから来る嫌悪感」をどう払拭するか。もしPepperの自動発券で嫌な思いを1度でもしてしまえば、次回から店舗に来てもらえなくなる可能性もあるでしょう。こうした来店客のストレスを取り除くためにも、準備期間における十分な説明は欠かせないようです。
ところで、実験の段階で「これは全国展開もイケる」と確信したキッカケは何だったのでしょうか。池ノ上さんは「子どもからお年寄りまで、大体の人が操作できていることが分かったから」と説明します。
「お年寄りの場合、最初の3カ月はスタッフが付き添って説明していました。すると、操作をマスターしたお年寄りが友人を連れてきて、Pepperの使い方を教えているんですね。その姿を見てお年寄りでも操作できると確信しました」(池ノ上さん)
1度使ったことがある人なら分かりますが、Pepperの胸部にあるタッチパネルのUI(ユーザーインタフェース)はとにかくシンプルです。人数を選ぶ→座席の種類を選ぶ→受付番号の発券という流れで、満席時は順次番号で呼び出されます。自分の番号が呼ばれたら、受付票に記載された寿司ネタをタッチパネルで選定、なりすましによる割り込みを防ぎます。
タッチパネルのUIは特にこだわっており、池ノ上さんは「とにかくシンプルに、余計な機能は盛り込まないように注意しました」と話します。
「日本人特有かもしれませんが、機械を多機能にしたがる傾向があります。文章は絶対に読まれないので一目で分かるUIを意識し、タッチパネルは『押しやすい。見やすい。分かりやすい』を心掛けました。文字ではなく、絵として分かるようにしたいのが大前提」
確かに、最近は回転寿司チェーンや居酒屋などでも、タッチパネルで注文する店舗が増えました。どの店舗も料理の写真が大きく見やすく表示され、直感的に絵として商品を捉え、操作できるようになっています。受付業務をこなすPepperのタッチパネルも、そうした知見が生かされているのがうかがえます。
従業員の負担を減らし、受付の混雑を解消する目的で導入されたPepperですが、実際にPepperが働いてくれて助かったこと、困ったことを聞いてみました。
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