サイバーエージェントが12月17日、官報に掲載したグループ子会社の決算公告によれば、最も黒字だったのはスマートフォンゲームなどを開発・運営するCygamesで当期純利益113億円、最も赤字だったのはインターネットテレビ局を企画運営するAbemaTVで当期純損失190億円だった。
Cygamesは2011年設立。「グランブルーファンタジー」「シャドウバース」といった独自タイトルや、「アイドルマスター シンデレラガールズ」「ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト」といった他社と共同開発した人気スマホゲームを運営している。
官報に掲載した決算公告(18年9月30日現在)によれば、当期純利益は113億5600万円(前年同期は133億6000万円)、累積の利益や損失の指標となる利益剰余金は542億2300万円(同428億6700万円)だった。
18年は4月に任天堂と業務提携を発表し、RPG「ドラガリアロスト」を共同開発した他、アニメ制作事業への参入も発表している。
一方、AbemaTVは15年設立。16年4月に開局した、主にスマホ向けのインターネットテレビ局「AbemaTV」を企画・運営している。サイバーエージェントとテレビ朝日が共同出資して設立された。10月には電通、博報堂DYメディアパートナーズとの資本業務提携も発表した。
官報に掲載した決算公告(18年9月30日現在)によれば、売上高は60億4100万円、経常損失190億8100万円、当期純損失は190億8400万円(前年同期は191億2500万円の赤字)、利益剰余金は474億6400万円の赤字(同283億8000万円の赤字)だった。
17年は「亀田興毅に勝ったら1000万円」、元SMAPメンバーが出演した「72時間ホンネテレビ」など、ユニークな取り組みが目立ったAbemaTV。18年は「パワプロ風野球中継」などが話題を集めた。年末は「Fate/stay night」シリーズの一挙放送も予定している。
17年に続き、18年度通期連結業績(17年10月〜18年9月)でも、本業の堅調さと「AbemaTV」への200億円規模の投資継続を発表していたサイバーエージェント。昨年同様、今回もグループ子会社の業績をランキング形式で整理し、グループの状況を考察します(昨年はこちら)。
まず黒字ランキングは、今年もCygamesをはじめ、サイバーエージェントのゲーム事業で主力タイトルを運営している企業が上位に顔をそろえています。その純利益の合計は165億円と巨額ですが、17年の同合計187億円と比較すると、ゲーム事業の“減速感”は否めません。特に「ジョーカー〜ギャングロード〜」を運営するアプリボットなどは、一気に黒字ランキングから赤字ランキングに移り、ジークレストも赤字に転落しています。
一方、黒字ランキングで存在感を示しているのが、占いサービスを運営するシーエー・モバイルやその子会社ティファレト、そして恋活アプリ「タップル誕生」のマッチングエージェントも大きく利益を伸ばしています。タップル誕生は、マッチングアプリ市場ではPairs(エウレカが運営)と激しく首位を争っており、”恋愛周り”はゲームに次ぐ有力なカテゴリーに育ってきているといえそうです。
次に赤字ランキングを見ると、こちらは17年同様「AbemaTV」が圧倒的。今年も本体や黒字ランキングで出ている利益を惜しみなく突っ込んで勝負に出る分かりやすい構図となっています。
さて、そうなるとやはり気になるのがAbemaTVの事業進捗。例えば、決算資料からWAU(1週間当たりの利用者数)を見てみると18年9月時点で600万人。17年9月の500万人と比較すると伸びてはいますが、17年は16年9月の250万人から2倍に伸びていたことを考えると、成長が鈍化しているようにも見えます。これまでのピークである、元SMAPが出演した17年11月の729万人も超えていません。
ただ、これだけで「うまくいっていない」と判断するのも早計で、各月の総視聴時間で見てみると、1800万(16年9月)→3500万(17年9月)→5300万(18年9月)と増えており、16年→17年は2倍、16年→18年だと3倍に伸びています。18年は17年ほど新規ユーザーの流入を呼び込めるインパクトのある企画は出せなかったが、レギュラー番組への定着率は新規・既存ユーザーともに高かった、といったところでしょうか。ユーザー属性を見ると、10代・20代の女性の新規流入が目立つため、恋愛リアリティショーの支持が厚そうです。
いわゆるF1層が取れるということは、今後の広告販売で大きなアドバンテージになります。やや意地悪な見方をすると、黒字ランキングで見た通り、“恋愛周り”のマネタイズには道筋を付けているので、今後は「集客」と「集金」というグループシナジーも期待できるかもしれません。
サイバーエージェントの発表によると、18年の動画広告市場は1843億円まで拡大、24年には4957億円に達する予測もあります。その果実を真っ先に享受できるのか、バラマキによる“TVの再発明”にとどまるのか。来年もサイバーエージェントとAbemaTVの挑戦と実験は続きそうです。
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《著者紹介》
平野健児。新卒でWeb広告営業を経験後、Webを中心とした新規事業の立ち上げ請負業務で独立。WebサイトM&Aの「SiteStock」や無料家計簿アプリ「ReceReco」他、多数の新規事業の立ち上げ、運営に携わる。現在は株式会社Plainworksを創業し「NOKIZAL」を運営中。
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