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「万引きバレる」無人店舗、顔認証で入店するコンビニ――2018年の未来型店舗まとめ

» 2018年12月26日 18時13分 公開
[ITmedia]

 米国でレジなし店舗「Amazon Go」が注目を集める一方、日本のコンビニ、スーパーマーケットも進化を遂げようとしている。交通系ICカードをかざす、あるいは顔認証システムで入店し、決済までスムーズに完了――アプローチは三者三様だが、そうした店舗が日本にも出てきた。2018年に相次いで登場した国内の無人決済店舗をまとめた。

「万引きバレる」無人店舗、赤羽駅に登場

 JR東日本は10月、AI(人工知能)技術を用いた無人決済システムの実験店舗を、赤羽駅(東京都北区)の5・6番ホームにオープンした。入口でSuicaなど交通系ICカードをかざして入店し、棚から商品を取りながら進む。出口のディスプレイには商品名、合計金額が表示され、駅の改札と同様、Suicaをかざすと支払いが完了し、ゲートが開く。

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 店内に設置した約100台のカメラが、入店した客を追跡。棚から取り出した商品も同じカメラで認識する仕組みだ。棚から商品を手に取った時点で人物とひも付けているため、カバンに商品を入れて「万引き」しようとしてもバレてしまう(関連記事:JR東の無人決済店舗で“万引き”してみた)。

 同店舗はオープン当日、無人決済システムを体験しようと多くの人が押し寄せ、長蛇の列ができた。話題性は十分といえるが、今後はカメラ精度の向上といった技術的な課題に加え、物流や品出しといった決済シーン以外での省力化や、ホーム上の店舗でどのように安全性を確保するかなども考えなければいけない。

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 無人店舗だと、九州を中心にスーパーマーケットを展開するトライアルカンパニーが12月、夜間だけ無人営業になる「トライアル Quick大野城店」(福岡県大野城市)をオープンした。客は入り口で専用アプリのQRコードか、同社のプリペイドカードをかざして入店する(関連記事:夜間無人のスーパーが開店 トライアルが日本初 QRコードで入店)。

 会計方法は、セルフレジを採用した。有人レジをなくしたことで、人件費の削減が期待できるという。セルフレジは来店者自身が商品のバーコードを読み取る作業が発生するため、ICカードを端末にかざして即決済とはいかないが、直近だと普及の見込みはありそうだ。

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 同店舗では、パナソニックのディープラーニング技術を活用し、冷凍・冷蔵ショーケースに内蔵したカメラの画像から、在庫状態や商品に対する客の行動、年齢・性別などを自動認識。POSデータでは得られなかった非購買データの収集にも取り組む。

コンビニ各社も省力型店舗

 無人店舗にはしないが、レジ打ち作業をなくして省力化しようという動きは、コンビニ各社でも活発だ。

 セブン-イレブン・ジャパンは12月、NECと共同で、顔認証システムで客を把握するコンビニの試験運用を始めた。NECの社員向けに、同社が入居するビル内にオープンした(関連記事:手ぶらで買い物できる“顔認証コンビニ”、セブン-イレブンとNECが都内で開始)。

 NEC社員が事前登録した顔のデータと、入り口のカメラで撮影した顔写真を照合し、本人かどうかを確認する仕組みだ。会計はセルフレジで行う。来店者が自ら商品のバーコードを読み取り、顔認証か社員証で決済すると、給与天引きで清算される。

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 ローソンは9月から、客がスマートフォンアプリで商品のバーコードを読み取ることで、店内のどこでもセルフ決済できるサービス「ローソンスマホペイ」を始めた(関連記事:「Amazon Goより日本に合う」――レジ待ちゼロ「ローソンスマホペイ」の先の未来 )。

 さらにローソンは、10月に開催された「CEATEC JAPAN 2018」で、客が商品を持ったまま出口のゲートをくぐると、自動で決済が完了するコンビニのデモンストレーションを披露した。商品には電子タグ(RFID)が付いており、1つの袋に商品をまとめて入れていても、袋ごとゲートに通せば全て認識される(関連記事:レジ待ち不要、出口を通れば自動決済 ローソンが2025年に導入へ)。

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 現状、電子タグの調達には1枚当たり平均13〜15円かかるため、安価な商品に貼ると採算が取れないという課題はあるが、コストを抑えられる調達先を探しながら、2025年を目標に実現を目指す。

 セブン-イレブン、ローソンともに、こうした決済の自動化は、あくまで店舗の省力化という考えを示している。セブン-イレブン・ジャパンの古屋一樹社長は「(無人店舗は)今現在は考えていない」と明言。コンビニが“社会インフラ化”する中、自動化が可能な作業と、接客など人間によるコミュニケーションが求められる場面を切り分ける――そんな姿勢がうかがえる。

 このようにアプローチは異なるが、各社が無人決済店舗、省力型店舗の構築に努めている。2019年、一般の人が利用できる機会はますます広がりそうだ。

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