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テレパシーも実現できる? AIで急加速する「ブレインテック」の世界(2/4 ページ)

» 2019年01月23日 07時00分 公開

 米国では脳の全容解明を掲げて、オバマ前大統領が13年に「The BRAIN Initiative」プロジェクトを開始。その予算規模はアポロ計画やヒトゲノム計画に匹敵する年間3億ドル以上に及ぶ。また、大学などの教育機関では脳の発達に着目し、ブレインテックで子どもの健全な育成に注力している。

 EU(欧州連合)は脳のモデル化を掲げて、13年に「Human Brain Project」をフラグシッププログラムの1つとして採択した。その予算規模は10年間で11.9億ユーロ。テクノロジーで脳をシミュレートすることで脳を理解し、社会的問題の解決を目指す。

 中国は「一体両翼」と称して、AI研究と並行して神経疾患研究を推進する「China Brain Project」を16年〜30年の15年計画として始めた。脳機能の研究を進めることでITとAIを発展させ、合わせて神経疾患の診断や予防に役立てようとしている。

 イスラエルはブレインテックの知見とサービスが集まる“Brain Nation”を目指している。13年から2年ごとに脳神経科学分野に特化したカンファレンスを実施しており、このカンファレンスを主催しているIsrael Brain Technologiesはイスラエル前大統領のシモン・ペレス氏が設立を主導した非営利団体である。

 他にもカナダの「Brain Canada」、オーストラリアの「Australian Brain Alliance」、韓国の「Korea Brain Initiative」など、各国がそれぞれの予算規模で研究を進めている。

 もちろん日本も手をこまねいているわけではない。文部科学省は「社会に貢献する脳科学」を掲げて「脳科学研究戦略推進プログラム」(脳プロ)を08年に開始。理化学研究所では霊長類の脳構造・機能マップの作成を目指して「Brain/MINDS」というプロジェクトを14年に開始している。

 また、内閣府は「ImPACT」(革新的研究開発推進プログラム)で、大学や企業が通常では困難な研究開発へ挑戦できるよう促進している。

 その研究開発プログラムの1つとして、脳情報の可視化と制御を目指すブレインテックプログラムが進行中である。京都の第三セクターである「国際電気通信基礎技術研究所」(ATR)も脳情報科学を大きな研究開発テーマに掲げ、脳機能解明とブレインテックサービスの事業化を目指している。

 こうした促進施策を受けて、民間レベルでもさまざまなサービスが出てきている。

 Philipsは睡眠中の脳波をリアルタイムに計測することで眠りの質を判定し、その状態に適した音を聞かせることでより深い睡眠に誘導するヘッドセット「SmartSleep」を家電見本市「CES2018」にて発表した。Halo Neuroscience社は、微弱な電流で脳に刺激を与えてスポーツのパフォーマンスを向上させるヘッドセット「Halo Sport」を開発し、MLB(メジャーリーグベースボール)のサンフランシスコ・ジャイアンツが導入している。

脳 Philipsの「SmartSleep

 InteraXon社はアプリと連動する簡易脳波計「Muse」を開発し、個人の脳にカスタマイズした瞑想アプリを提供している。このように、現在ブレインテックは健康、睡眠、集中といった分野のサービスに活用されることが多いといえそうだ。

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