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» 2019年01月23日 07時00分 公開

テレパシーも実現できる? AIで急加速する「ブレインテック」の世界(3/4 ページ)

「考える」だけで文字入力が可能に?

 ブレインテックの中でも、世の中を大きく変えるといわれている技術が「BMI」(ブレイン・マシン・インタフェース)だ。「BCI」(ブレイン・コンピュータ・インタフェース)と呼ばれることもある。

 これまで人は機械を動かすのに主に手を使ってきたが、近年Amazon EchoやGoogle Homeといったスマートスピーカーが登場し、声という機械操作の新たなインタフェースを手に入れた。しかしブレインテックで脳の見える化が進むと、声を発する必要すらなく、頭の中で考えただけで機械が動くようになる。絵空事のように聞こえるかもしれないが、既に開発は始まっているのだ。

 スタンフォード大学が17年に公開した論文では、身体がマヒしている患者の脳に電極を設置して脳活動を読み取り、画面上のカーソルを操作している。

 FacebookはBMIに着目し、考えただけでスマートフォンに文字入力ができる「Brain-Typing Project」を開始した。17年のイベントでは手入力の5倍の速さに相当する、1分間当たり100語を入力できるシステムを開発すると発表している。

 Microsoftも思考を使ってアプリケーションを動かす技術に着目し、18年1月に「ブレインセンシングシステム」の特許を取得した。また、「DARPA」(米国国防高等研究計画局)は義肢を脳と直接つなぐことで、義肢で何かに触れたという触覚を脳が感知できることを示した。

テレパシーは実現するか

 日本での面白い試みとしては、先述したImPACTのプログラムにおいて、健常者が自分の両腕を動かしながら第3の腕としてロボットアームをBMIで操作する手法を18年に世界で初めて実現している。

 ブレインテックの潮流はまだ始まったばかりだが、これがさらに進展していけば人類はさらに大きなパラダイムシフトを迎えるかもしれない。つまり、ブレインテックはただ生活の質を上げるだけにとどまらず、先々は人間の身体と認知能力を進化させるような「トランスヒューマニズム」と呼ばれる思想にも関わってくるのだ。

 実際に、実業家のイーロン・マスク氏はNeuralinkという会社を立ち上げ、脳にデバイスを埋め込むことでテレパシーのように言語を用いないで意思疎通を図ったり、脳とクラウド上のAIを接続して人の計算能力を補うといった研究を進め、8〜10年後の実用化を目指している。

 Kernel社は脳に小さなデバイスを埋め込んで認知症を改善する研究開発を行っており、既にラットを使った実験で脳の海馬にデバイスを埋め込むことで記憶力を改善することに成功しているという。Paradromics社は脳のニューロンに直接接続する技術開発を行い、DARPAから1800万ドルを超える投資を受けている。

 ニューロンへの接続はどれだけ多く同時に接続できるかでやりとりする情報の精度と量が変わるため、Paradromics社は現在100万個のニューロン接続を目指しているのである。

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