ここで、日本の現状をいま一度確認してみたい。
ブレインテックが海外でいかに注目されていようとも、日本では脳にデバイスを埋め込むことは言うに及ばず、脳に微弱な電流を流すと聞いただけで抵抗感があるという人も少なくないだろう。
ブレインテックの実用化を日本でも進めていくならば、BMIのようなハードルが高いものよりは身近な分野に焦点を当てるのが良さそうだ。しかしながら、ブレインテックと親和性が高く身近な健康という分野では、少し踏み込むと医療の分野に入ってしまう。医療分野において、日本は良くも悪くも規制が強く、そこでの取り組みには時間がかかってしまう。そのため、まずは睡眠、仕事(働き方改革)、教育、スポーツなどの分野からブレインテックを活用したサービスを展開していくべきだろう。
では、それらの分野で先行している海外で既に実用化されているサービスには、どのようなものがあるか。睡眠分野では、上述したPhilipsの「Smart Sleep」以外にも入眠補助などさまざまなサービスが出てきている。
働き方改革分野ではフランスのmyBrain Technologies社が脳波を計測し最適な音楽を流すことで不安症を予防できるヘッドセット「melomind」を開発した。イスラエルのMyndlift社は「ADHD」(注意欠陥・多動性障害)の子ども向けに脳波を計測して注意力を向上させるトレーニングアプリを提供しているが、これは働き方改革にも応用できる。並行して、スポーツのパフォーマンスを向上させるトレーニング提供も行っている。
日本では日立ハイテクノロジーズと東北大学がNeUを設立し、脳血流を計測する機器を使って働き方改革を図るサービスを提供している。また、センタン社はテレビCMを見た際の脳波を計測し、視聴者へのインパクトを数値化する試みを開始した。
メディアシーク社もブレインテックのポテンシャルに注目し、先述のMyndliftと日本での販売代理契約を結び、働き方改革やスポーツの分野でサービスを提供している。これからもブレインテックの情報を発信していくとともに、新たなサービスを提供していくつもりである。
先進国の中で日本ほど睡眠時間が短く、労働生産性が低く、一方で教育やスポーツに投資する国はないといっても過言ではない。また、日本人の平均寿命が伸び続ける中で、健康寿命も同様に伸ばしていくことが急務といわれている。
こうした背景から、日本にはブレインテックの大きな需要が眠っていることは間違いなく、今後もブレインテックの動向から目が離せない。
「EdTech」や「BrainTech」などの分野でサービス開発を行うIT企業。カスタムメイドのシステム開発ソリューションと、豊富な開発実績から生まれた教育事業者様向けのスクール管理システムパッケージ「マイクラス」の他、LMS(ラーニング・マネジメント・システム)、各種Webサイト、スマートフォンアプリを提供している。
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