NTT東日本とAI(人工知能)ベンチャーのAI insideは1月23日、ディープラーニングを使って帳票内容を読み取るOCR(光学文字認識)サービス「AIよみと〜る」の提供を始めた。データ入力業務などを自動化するRPA(ロボットによる業務自動化)サービス「おまかせRPA」と合わせて提供することで、紙書類のデータ入力などを手作業で行うバックオフィス業務の効率化をサポートする。
紙帳票に記載された内容をスキャナーで読み取り、デジタルデータ化したものをAIよみと〜るで検出する。AI insideが開発したAI基盤「Neural X」の学習アルゴリズムを使ったディープラーニング技術と、ゆがみ・傾き補正機能を組み合わせることで、手書き文字も含めたトライアルでは96%以上の認識率を実現したという(NTT東日本調べ)。欄外にはみ出た数字、訂正印、2行にわたって折り返して記載された住所なども、AIが内容を予測して自動補正するとしている。
直感的に操作できるブラウザベースのGUI(グラフィカル・ユーザー・インタフェース)を採用し、使いやすさも考慮した。入力内容を目視し、その場で修正することもできる。料金は月額10万円(税別)から。オプションとして帳票を自動仕分けするサービスも提供する。
「精度の高い文字認識」を実現できた理由について、AI insideの渡久地 択社長は次のように説明する。
「AIモデルの生成には教師データ(画像)と正解データ(テキスト)が必要になるが、教師データを大量に集めるのは難しく、正解データを用意するにはコストがかかる。こうした問題を解決するため、正解データから手書き風の文字をAIに自動生成させるようにした。これで教師データが大量に作れるようになり、文字認識精度も上がった」(渡久地社長)
同社はさまざまな文字画像をクラスタリングしてバーチャル空間内に配置。AIがパラメータを自動調整することで、似ている文字同士を自動で学んでいったという。いまはユーザーが利用する情報(帳票データなど)を学習することで、さらなる精度向上を目指している。
また、おまかせRPAを使えば読み取ったデータをCSVファイルでダウンロードし、企業の基幹システムに自動入力できる。RPAツールはNTTデータが販売する「WinActor」を採用した。料金は月額7万5000円(税別)から。情報システム担当者がいない企業でも使えるよう、電話による遠隔サポートや有償の訪問サポートも提供する。
NTT東日本の石川達副本部長(ビジネス開発本部)は「NTTデータもWinActorのライセンスを提供しているが、われわれは情報管理者がいない中堅・中小企業も支援できるよう、サポート体制を充実させている」と話す。
トライアルを実施した辻・本郷税理士法人では、税務業務のための銀行通帳のデータ化や読み取り結果のエラーチェックなどの作業時間を83%削減できたという。
辻・本郷税理士法人の久和大輝さん(関西会社設立センター センター長)は、「通帳1冊当たり1時間かけていた作業時間が10分に短縮できた。これまで繁忙期はパートを雇うなど人海戦術で対応していたが、それらを自動化できて助かっている」と語った。
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