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視線と声で操る「第三の腕」、早大とパナソニックが共同開発へ

» 2019年01月25日 21時04分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 雨が降り出したのに荷物を抱えていて傘が差せない、両手でハンバーグをこねているときに鍋が噴きこぼれそうになった……日常生活の中で「もう1本、手があれば」と思うシーンは意外と多い。早稲田大学 岩田研究室が開発した「第三の腕」は、そんなときに便利なロボットアームだ。

「第三の腕」

 人の腕と同様に肩や肘、手首といった関節を持ち、「グリッパ」と呼ばれる3本指で器用に調味料やドライバーをつかむ。ロボティクスを活用して人の身体能力を引き上げる“身体拡張”を目指して開発した。

 グリッパの中には粉粒体が入っており、モノに触れると柔軟に形を変える。つかんだところで中の空気を抜くと、グリッパの形状が固定され、柔らかいものでも余計な力を加えずにつかめる仕組みだ。

グリッパ

 ロボットアームの操作は視線と声で行う。例えば調味料をとってほしい場合、操縦者が調味料を見ると、「アイグラス型インタフェース」のジャイロセンサーと赤外線センサーが顔の向きと対象物までの距離を測定して調味料を特定、「とって」と声で指示するとロボットアームが動く。操縦者が対象物を視線で狙いやすくするため、アイグラスにはレーザーポインターも備えている。「身体拡張技術で重要なのは、直感的に指示して“意のままに操れる”こと」と岩田教授は話す。

「アイグラス型インタフェース」を装着して説明する岩田浩康教授

 腕の形は必ずしも現在の形である必要はない。「ロボットアームが人の体に付いている必要もない。形は自由で、(テーブルや壁など)環境にあってもいい。例えば『ワンピース』のルフィのように延びる腕もあり得るだろう。人体拡張は既存の人体イメージからの解放をもたらす可能性がある」(岩田教授)

さまざまな場所に第三の腕

 岩田研究室は、1月25日にパナソニックが発表したロボット技術の共創拠点「Robotics Hub」に参画。共同研究を進め、サービスロボットなど次世代ロボットの早期実用化を目指す。発表会場では第三の腕を使用して天井ボードをビス留めする作業に披露したが、これはロボット技術の活用に向けてパナソニック ホームズに聞き取りをした際、「とくに困っている作業の1つだった」という。

天井ボードの取付作業に活用

 天井ボードを取り付けるには下から支えていなければならず、2人で作業すれば簡単だが、人手不足の現場ではなかなか難しい。しかし第三の腕を使って天井ボードを支えれば、1人でも作業できる。パナソニックでは「実用化のスケジュールは未定だが、うまく現場に導入したい」と話していた。

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