「心地いい眠り」を支援するテクノロジーがいま、「SleepTech」(スリープテック)として欧米で注目を集めている。筆者が最近の海外取材で見つけた製品を振り返りながら、ウェアラブルデバイスの新たなトレンドともいえそうなスリープテックの現状を紹介していこう。
眠りを支援してくれるデジタルガジェットといえば、筆者も米Bose(ボーズ)が昨年秋に発売した「Bose Noise-Masking Sleepbuds(Bose Sleepbuds)」を使っている。
一見、小さなワイヤレスイヤフォンだが、実は眠りの支援に徹したデバイスで、音楽を聞くことは考えられていない。本体のメモリ内に「鳥のささやき声」「波のさざめき」などいくつかのヒーリングサウンドをインストールし、耳に装着した状態で再生すると周囲の環境音を打ち消してくれる、いわば「スマート耳栓」だ。ユーザーの心拍や体温など生体データを取得して複雑なことをする機能もない。もちろん医療器具ではないので、ボーズのショップで誰でも購入できる。
昨年秋にドイツ・ベルリンで開催されたエレクトロニクスショー「IFA 2018」の会場では、このBose Sleepbudsによく似たイヤフォンタイプのスリープテック製品を複数見つけた。例えばフィンランドのQuietOnが開発した“スマート耳栓”「QuietOn Sleep」だ。
Bose Sleepbudsと同様、スマートフォンなどとペアリングして音楽を聴くことはできない。一方でアクティブノイズキャンセリング機能を搭載しているため、遮音性能は一段と強力。実際に会場で試してみたところ、むしろ消音効果が強すぎる印象を受けた。寝ているときにサイレンの音や家族の呼びかけが聞こえなくなってしまうのも何だか怖い。比べてみるとBose Sleepbudsは若干、外の音が漏れ聞こえてくるような“あそび”があって良いと思う。それにヒーリングサウンドが再生できる仕掛けもやはり大事。単に遮音性を求めるなら、普通のウレタンフォーム製耳栓で十分だからだ。面倒な充電も要らない。
スマート耳栓はベッドに横になり、枕に顔を寄せながら使うものなので、装着時に不快に感じないことが何より重要だ。本体を小型化しながらセンサーやバッテリーを詰め込むことは相当難しいはずで、Bose Sleepbudsが“引き算の美学“を貫いて、ヒーリングサウンドを再生するだけのシンプルな仕様としたことは今のところ正解だと思っている。今年は小さくても多機能な製品も出てくるだろうか。
海外の展示会でイヤフォンタイプ同様によく見かけるのが「ヘッドギア」タイプのスリープテックデバイスだ。筆者は去年のIFAでPhilipsの「SmartSleep」を取材した。
ご覧の通り、外観はラグビーのヘッドキャップに似ている。SmartSleepの本体には装着したユーザーの頭皮に接触し、皮膚から脳波を電気的にピックアップするためのセンサーがいくつか埋め込まれている。
SmartSleepは、深い睡眠といわれる「ノンレム睡眠」(余波睡眠)を検知・解析してユーザーのコンディションを測定する。アプリ「SleepMapper」をインストールしたスマートフォンと本機をBluetoothでペアリングし、枕元に置いて寝ると、起きたときには一晩の睡眠データがアプリに取り込まれている。グラフを見ると深い眠りが得られた時間と、眠りが浅くなったり、時折目覚めてしまった時間がタイムラインで追える。眠りの質をスコアで評価、“見える化”してくれる。
単にユーザーの睡眠状態をトラッキングするだけではない。深い眠りの状態が維持できるようにアシストする機能もある。
ヘッドギアのこめかみのあたりに骨伝導素子を装着し、振動を使ってオーディオトーンを再生する仕組み。深い眠りの状態が長続きするように、音の力で眠りのベストコンディションをキープするという。残念ながら去年は実際に試す時間がなかったので、もし次の機会があれば体験してみたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR