ここ数年、脳科学を駆使した新たなデバイスも姿を見せるようになってきた。脳とテクノロジーを掛け合わせた造語として「ブレインテック」と呼ばれることもあるが、今年のCESに出展したフランスのURGOTECHの製品「URGONight」は、まさにブレインテックをベースに開発したという面白そうな製品だ。
URGOTECHはフランスURGOグループのヘルステックスタートアップ。URGONightは写真を見て分かる通り、ヘッドギアタイプのスリープトラッカーだ。フィリップスのSmartSleepと大きく違うところは、「起きている時間に装着して使うデバイス」ということ。ユーザーは目覚めている時間に宅内やオフィスなどで、本機を使って20分程度の測定を週3回行う。この“スリープトレーニング”により脳を鍛えるのだ。
測定にはヘッドギアとスマートフォン用アプリを使う。ヘッドギアには脳波測定(EEG)ができる4つの脳波計(センサー)を搭載。それぞれのセンサーが頭皮から電気信号をピックアップして測定する。
日中の活動時間に毎日15〜20分程度のエクササイズを3回、約3カ月間行うと、SMR脳波と呼ばれる、脳がリラックスしつつ集中している状態の時に発する信号を“出しやすく”なるという。これが引いては眠りの改善につながるというURGONightではユーザーの眠りの質を改善するため、脳波の周波数(=脳の活動)の調整を行うニューロフィードバックというメソッドを採用している。海外では軍隊やスポーツチームがパフォーマンス向上のために採用する事例もあるというもので、SMR脳波と呼ばれる、人間の脳がリラックスしつつ集中している状態の時に発する信号を解析、脳波が現れるとアプリの画像にスコアを表示したり、目に見えるかたちでフィードバックを返す。
このようなトレーニングをおよそ3カ月間、繰り返し行うことで、脳が「リラックスと集中」のバランスが良好なコンディションを自律的に学習していくという。これが身につくと、夜には心地よい睡眠が得やすくなるそうだ。根気よくトレーニングして、成果が現れはじめるのが3カ月後ということで、テストするには時間がかかりそうなデバイスだが、商品化が実現したら試してみたい。同社ではクラウドファンディングサービスのIndiegogoで資金を募り、2019年内に500ユーロでプレローンチを予定している。一般販売は2020年を目指しているそうだ。
日本では欧米に比べてスリープテックが盛り上がっていないように思う。理由は色々と考えられるが、製品の仕様、機能の使い方によって医療機器に分類されてしまう可能性もあり、立ち位置が難しい。アプリを使ってトラッキングしたユーザーの健康に関連するデータをクラウドに上げて解析、かかりつけの医師と手軽にシェアできるサービスなどがあれば便利だと思うのだが、このようなスマートデバイスの使い方もすぐには実現しにくい。
Apple Watch Series 4は写真の光学式心拍センサーのほか、日本ではまだ有効化されていない精度の高い電気式心拍センサーを搭載している。活用できればユーザーが自身で心疾患の予防、対策ができる画期的なウェアラブルデバイスとして注目を集めそうだ例えばAppleのスマートウォッチ「Apple Watch Series 4」は、内蔵のECG(心電図)を使って測定した心拍データをヘルスケアアプリでPDFファイルにして病院に持ち込める。心疾患への対策・予防をユーザーが自身の手で講じられる素晴らしい機能だと思う。ソフトウェアのアップデートによりアメリカではこの機能が使えるようになったが、日本での導入時期についてまだ見通しが立っていないのが残念だ。
また、ヘッドギアタイプの製品については、装着感に違和感がなかったとしても、高温多湿で汗をかく日本の夏には不向き。最近は欧米も夏がとても暑くなるため、同様の声が高まるかもしれない。今後は本体を小型化するなど装着感の改善に向けてさらに工夫が求められるだろう。せめてカチューシャぐらいのサイズになってほしい。
睡眠に関連するトラブルは、心と体の両方に影響を与えてしまうもの。スリープテック製品は、眠りに関する悩みを抱えている人たちにとって、手軽に導入できる有効な解決策になるかもしれない。
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