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RPAで仕事が変わる ロボットと始める働き方改革

働き方改革の“即効薬”? いま「RPA」が注目される理由特集・RPAで仕事が変わる(3/5 ページ)

» 2019年02月01日 10時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

サントリーホールディングス

 サントリーホールディングスでは17年にRPA導入の検討をスタートし、18年1月にRPAを導入、働き方改革の推進に役立てている。導入した業務は営業サポートから生産・販売管理までと幅広い。

 例えば公表されている活用例では、「Excelファイルで管理されている数百件の得意先ごとにメールを作成する」「POSデータをダウンロードして加工する」といった具合である。サントリーはこうしたルーティン業務をRPAに置き換えることで、グループ全体で3.5万時間の社内業務削減を目指している。

第一生命ホールディングス

 生保大手の第一生命ホールディングスは、16年という早い段階からRPA導入に着手。彼らは23年までに、従業員2100人分の業務を削減し、浮いた人員と予算を成長分野に再配分する方針を打ち出している。その切り札を握るのがRPAというわけだ。

RPA RPA活用イメージ(第一生命ホールディングスより)

 こちらも幅広い業務でのRPA導入を進めており、トライアル段階では個人保険事務の約20種類の業務で活用してきたが、17 年10月からは保険関係事務だけでなく、マーケティング、総務、会計、資産運用に関わる事務にまで導入を拡大している。その結果、RPAが代替する時間は、既に約2万7000時間に達しているという。

【訂正:2019年2月1日13時20分更新 ※一部内容に誤りがありました。お詫びして訂正致します。】

損保ジャパン日本興亜

 損保業界ではどうだろうか。メガ損保の一角を占める損保ジャパン日本興亜は、18年1月からRPAの導入を進めていると発表。対象は本社部門における約100項目の業務だ。

 例えばプレスリリース内では「コールセンターへの入電記録を基にした各種書類作成の自動化」「口座振替依頼書の不備メール配信の自動化」「社宅申請・承認業務の自動化」などが挙げられている。

 こうした業務をRPA化することで、人間の負荷を減らして働き方改革を実現するだけでなく、「人間と比べて継続的かつ安定的に品質を確保した業務の遂行が可能」として、品質面での効果を得ることも目指している。

 面白いのは、情報セキュリティの強化という効果も掲げられている点だ。つまり機密情報に触れる業務をロボットであるRPAに任せれば、悪意のある人間がそれにアクセスするリスクが減る。こういった単なる業務効率化以外の効果も認められつつある。

茨城県つくば市

 行政機関の例も紹介しておこう。多くの企業や研究・教育機関が存在する、茨城県つくば市。同市は18年1月から4月にかけ、NTTデータ、クニエ、日本電子計算の3社と契約し、国内の自治体としては初となるRPAの導入研究を行った。

RPA RPAを活用した行政課題の解決イメージ(茨城県つくば市らのリリースより)

 対象となったのは、事業所の新規登録業務や異動届受理通知業務など基幹系の6業務と、退勤データ集計など内部事務系の2業務。これにRPAを導入した結果、例えば個人住民税・法人市民税に関する基幹系5業務の合計で、現状約424時間かかっていた作業を、約88時間に減らせる(削減率約80%)など、高い効果が得られる可能性があると結論づけている。

 このようにRPA導入は、業界や業種を問わず進んでおり、かつ大きな効果を出すことに成功する例も出ている。海外でも鉄道会社のVirgin Trainsや、オーストラリアの電力会社Synergy、オンラインマーケティング企業のCore Digital Mediaなどの例があり、もはやRPAが導入されていない領域を探す方が難しい。

「魔法のツール」は誤解 RPAが得意なこと、苦手なことは?

 「ロボットのよう」と例えられ、名前にも「ロボティック(ロボットによる)」という単語が入っているRPA。しかし、RPA=ロボットとイメージすると問題も生じる。

 「RPAは何でもできる魔法のツールだ」という誤解や期待が生まれることで、いざ導入するとユーザーたちががっかりしてしまうという例があるのだ。

 そこでRPAでできること、得意なことや苦手なことを整理しておこう。

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