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RPAで仕事が変わる ロボットと始める働き方改革

働き方改革の“即効薬”? いま「RPA」が注目される理由特集・RPAで仕事が変わる(2/5 ページ)

» 2019年02月01日 10時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

 RPAはあなたと同じように、デスクトップ上でブラウザを立ち上げて社内イントラにアクセスし、ダウンロード画面を開く。そしてあなたと同じように画面を操作して、必要なファイルをダウンロードするのだ(正確に言うと、「見かけ上」人間と同じように操作するだけで、人間とは違う方法で対象システムを制御している場合もある)。

 100人の営業員向けに、対象データをそれぞれ別ファイルでダウンロードする場合でも、泣き言を言わず同じステップを100回繰り返してくれる。しかも条件をインプットする際に間違うこともなく、操作の速度も人間より断然速い。

 これがRPAの強みで、既に存在しているアプリケーションやシステムを使って、既に人間が行っているのと同じ作業を、ロボットの正確さとスピードで自動化できるのである。実際、RPAのベンダーや導入コンサルの中には、RPAを「仮想労働者」や「デジタルレイバー」などと呼ぶ会社もある。あたかも見えない人間がそこにいて、あなたの代わりに作業しているかのよう、というわけだ。

なぜいまRPAか

 「それってマクロやテスト自動化ツールみたい」と感じた方もいるはずだ。仰る通り、筆者自身、RPAを紹介する際に「マクロやテスト自動化ツールのようなもの」と例えることが多い。近年の情報技術の発展により、さまざまな既存アプリケーションを問題なく操作できるRPAが実現され、競うように商品化されているというのがここ数年の状況だ。巨大な日本市場を狙って、海外の有力RPAが日本進出するという例も相次いでいる。

 日本市場ではRPAに対して、もう一つ追い風が吹いている。安倍晋三首相が力を入れる「働き方改革」の推進だ。

 働きやすい職場環境を実現するという「働き方改革」も、ここ数年ビジネス界の流行語となっている。特に大企業には、時間外労働の削減が強く求められており、2019年4月には大企業を対象とした新たな残業規制が施行される。

 短期間・低コストで従業員の仕事を大きく減らせる施策は限られている。しかしRPAがあれば、これまで「費用対効果の観点からシステム化が見送られてきた作業」を自動化できる可能性が開けるというわけだ。ちなみに安倍首相が議長を務める、国の成長戦略を議論するための「未来投資会議」も、18年6月に示した素案の中で、デジタル行政実現の基盤技術としてRPAを挙げている。

国内企業のRPA導入事例

 こうした環境が追い風となり、17年から18年にかけて、誰もが知る大手企業や金融機関、さらには行政機関でのRPA導入が相次いだ。こうしてRPAへの注目が高まり、導入に踏み切る企業や団体も増えていることで、国内のRPA市場は大幅な伸びが予想されている。

 例えばIT調査会社のアイ・ティ・アール(ITR)が18年10月に発表した資料では、市場規模(売上金額)が17年度の35億円から22年度には400億円へと、5年間で10倍以上に成長すると予測している。

RPA RPAおよびOCR市場規模推移および予測(アイ・ティ・アールの資料

 著名な企業や組織のRPA導入事例を、いくつか挙げてみよう。

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