ソフトバンクグループ(以下SBG)の孫正義代表取締役社長兼会長は2月6日、2018年度第3四半期決算説明会で、16年12月に約3000億円で取得した米NVIDIAの株式を全て売却したと発表した。市場変動によりNVIDIA株が急落したため、18年度Q3(10月〜12月)の連結営業利益に4000億円のマイナス影響が出ると見られていたが、「保険」をかけることでQ3の損失を約1169億円に抑えたという。
SBGはNVIDIA株を平均単価105ドルで取得(のちにソフトバンク・ビジョン・ファンドに移管)。18年9月末に281ドルの高値を付けた後、12月には134ドルまで急落した。18年度Q1(4月〜6月)には155億円、Q2(7月〜9月)には1322億円の未実現評価利益を計上していたが、急落により、Q3は4473億円の未実現評価損失となった。
しかし、孫社長は「株価が絶好調のときに、市場に供給のある分、丸ごとコールとプットを集めていた(カラー取引)。黙って静かに半年以上かけて、毎月一番のぼり調子のところで保険を買い集めた」と、現物株を持ちながら価格の下落をヘッジしていたと明かす。
カラー取引により、デリバティブ関連利益として約3300億円の利益を上げたため、Q3の損失を約1169億円に抑えられたという。
SBGは18年12月31日までに所有するNVIDIA株を全て売却。結果として、投資額3000億円のうち普通出資していた807億円を、3624億円で回収した。
SBGは、サウジアラビア政府系ファンドとタッグを組んだ投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(以下SVF)で、AI(人工知能)関連企業に10兆円規模の投資をする「AI群戦略」を16年から掲げている。
NVIDIAもAI群戦略の投資先の1つだった。孫社長はNVIDIAを「AI革命をリードする企業として高く評価している」というが、そのような企業から資金を引き上げるのはAI群戦略と矛盾しているのではないか。
そんな疑問に、孫社長は「いわば卒業だ」と答える。
「事業会社であれば、自らが使うなら(事業と関連するなら)ずっと持っていないといけないかもしれない。しかしSBGは純粋な持株会社。投資をして適切な段階で売却するのが日常の業務だ。投資先企業が伸び続けているときには持ち続けるが、伸びが成熟してきた頃、そして他の機関投資家や一般投資家に支えられてきた頃、彼らが独自に歩んでいくのはいずれかの時期でやってくる」(孫社長)
「AI群戦略はそれでいい。株式の51%を持って会社をコントロールしようとも思っていない。20〜40%の間でSVFが筆頭株主になり、(AI群戦略の)ファミリーがシナジーを出し合う。ファミリーに対して何らかのアクティブな影響は与えるがコントロールはしない。100社ほどの群れなので、2〜3社が時々卒業していっても『大勢に異常なし』。こういうことだ」(同)
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