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「3分の1はお蔵入り」 失敗例に学ぶAIプロジェクトの勘所(1/2 ページ)

» 2019年02月15日 14時58分 公開
[村上万純ITmedia]
電通 電通のAIプロジェクトチーム「AI MIRAI」を統括する児玉拓也さん

 「AI(人工知能)プロジェクトは早く失敗し、知見をためていくことが大事だ」――電通のAIプロジェクトチーム「AI MIRAI」を統括する児玉拓也さんは、自身の経験を基にこう話す。同社はAIによる広告コピー自動生成システム「AICO」や、テレビ視聴率の予測システム「SHAREST」などを開発してきたが、これまで手掛けた約50個のプロジェクトのうち、3分の1は“お蔵入り”するなど、失敗例も少なくない。

 普段はなかなか表に出てこない失敗例から学べることはいくつもあるだろう。2月13日に都内で開催されたAIイベント「THE AI 3rd」で、児玉さんは「失敗例に学ぶAIプロジェクトの勘所」を解説した。

よくある失敗例から学べること

 AIプロジェクトを(1)プロジェクト設計、(2)データ収集、(3)アルゴリズム開発、(4)評価、次のステップ――に分けた上で、それぞれの工程でよくある失敗例とその打開策を紹介した。なお、今回登場する“よくある失敗例”は電通の事例とは無関係であるとしている。

電通 AIプロジェクトの基本ステップ

その1:プロジェクト設計

 AIプロジェクトの始まりとしてよくあるのが、「いま人がやっているこの作業を、何となくAIで代替できるのではないか」と、目的が曖昧なまま進めてしまう例。児玉さんは「何となく画像認識系のAIが使えそうというレベルでやってしまうと、求めているような高い精度が出ず、結局人間の方が良かったというパターンに陥ってしまう」と話す。「AIを使うこと」が目的になってしまい、失敗してしまう例だ。

 さまざまな失敗例を見聞きする中で、「人間が勘と経験を基に行っているような作業はAIに向いている」と感じたという。現時点で人間でも高い精度が出せない作業はAIで対応しても大した差がない場合があり、常に高い精度を求められる作業では人間がフォローに入る必要が出てくる。「ベテランの勘と経験」で成り立っている作業は、精度の向上と自動化の両方を狙えるという発想だ。

電通 AIで代替しやすい作業

その2:データ収集

 「たくさんの落とし穴がある」(児玉さん)と注意喚起するのが、データ収集の工程だ。データ量の不足や、散逸したデータの統合など解決すべき課題はいくつもある。児玉さんは、データ収集のために新規事業を立ち上げるケースについて「そもそも新規事業がうまくいくかどうか分からないため得策ではない」と指摘する。

電通 失敗は怖くない

 また「AI開発の8割はデータの見極めで決まる」と強調。AIに何を学習させ、何を推測させるのかを丁寧に設計するには「データの量や質についての肌感覚」が必要になるという。児玉さんは、こうした肌感覚は失敗しながら身に付けていくものとしている。

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