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「メルペイ」から考えるモバイル決済「勝利の方程式」(2/3 ページ)

» 2019年02月22日 18時32分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

「決済以上」のアプリ活用サービスが勝敗を決める

 またメルペイでは、将来的に「あと払い」の導入を検討している。「メルペイあと払い」として、数万円までの少額貸し付けを行い、メルペイに残高がチャージされていなくても、「メルペイあと払い」の残高の中で買物が可能になる。この「貸付枠」は、メルカリ内での取引の履歴から決定されるものだ。

photo メルペイでは、メリカリでの取引履歴からの信用情報に基づいた「メルペイあと払い」の導入も予定している

 これまでの利用履歴を与信に使うという発想、そしてそこから少額貸し付けにつなげるという発想は、ソフトバンクなどが「携帯電話の支払い履歴を与信に使う」としてきた方針と変わらない。中国にもすでにあるビジネスモデルだ。だが、メリカリというチャンネルとの親和性もあり、多くの人にとっては「新しく、魅力あるビジネス」に見えるだろう。クレジットカードをもっていない人々を軸にビジネスを回している部分があるメルカリとしても、ビジネス構想に盛り込むのは自然な発想である。

 このことは、モバイル決済が使われる「もうひとつの条件」に関係してくる。

 といっても、それは「貸し付け」「あと払い」のことではない。「単純な支払いを超えたサービス価値があるか否か」ということだ。

 冷静に考えてみよう。

 Suicaが広く使われているのは、「公共交通で使うと便利」という付加価値があるからだ。モバイル決済は「キャッシュレスである」というメリットはあるものの、それだけなら過去の決済と変わらない。市場規模も変わらない。「お金を払う」こと以上の機能や付加価値があって初めて、継続的に使う人が出てくる。

 「あと払い」はそのひとつ、ということができる。この他にもモバイル決済では、店舗に入り商品を手にする前に決済を終える「前払い」や「個人間送金」など、アプリを使った多彩な機能の導入が考えられる。アプリを介してどれだけそうした付加価値を提供できるかが、サービスとしての価値を決めるだろう。

 モバイル決済では「ビッグデータの活用で新しい商圏を」という言葉が必ず出てくる。これは主に事業者と店舗、すなわち「提供側」の論理で成り立つコメントだが、ビッグデータ活用によるマーケティングで新しい便利な機能が出来れば、それもまたモバイル決済の付加価値となる。逆にいえば、そこで消費者にメリットがあり、使いやすい(ここが重要だ)機能を提示できなければ、「決済」以上の付加価値は生まれないので使われない……ということになるだろう。

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