宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月1日、超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)の運用を終了したと発表した。世界最高速の3.2Gbps衛星伝送(2014年当時)や、被災地への通信環境提供など、約11年の活躍に幕を下ろした。
2月9日午前6時36分頃からきずなと通信できない状態になっていた。JAXAは約2週間にわたって復旧を試みたが、「これ以上の運用は不可能」と判断。きずなの送信機とバッテリーを停止するコマンドを27日午後3時54分に送信。これをもって運用を終了したという。
きずなは、高速通信網が整備されていないアジア・太平洋地域の情報格差解消や、衛星を使ったギガビット級の高速通信技術の確立を目的として、JAXAとNICT(情報通信研究機構)が共同開発した衛星。08年2月に種子島宇宙センター(鹿児島県)からH-IIAロケット14号機で打ち上げられた。
打ち上げ時の伝送速度は622Mbpsで、09年には東京都小笠原村・父島でのブロードバンド通信実験や、皆既日食のライブ配信などに使われた。10年には1.2Gbpsの伝送速度を実現していた。
11年に発生した東日本大震災では、地上通信網が損傷した岩手県で災害対策本部にきずなを経由させたインターネット環境を提供するなどで活躍した。
11年6月には予定されていた実験を完了。5年の設計寿命を経過した13年以降も、後期運用として実験が続けられ、伝送速度3.2Gbpsの実現、4K映像の非圧縮伝送に成功(14年)、南海トラフ大震災を想定した通信訓練(15年)など、衛星を使った高速通信の有用性を示した。
JAXAは「(きずなは)多くの成果を上げてきた。これまでの運用にあたり、協力をいただいた関係各機関及び各位に深く感謝する」とコメントしている。
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