「京都・嵐山で1時間、迷子になってくれる人を募集」――東京大学、京都大学などがこのほどそんな募集を出し、ネット上で話題を呼んでいる。2月25日朝に募集を始めたが、30人の定員に対し「想定をはるかに上回る応募があった」といい、27日に締め切った。
実証実験の目的は何か。京都大学の笠原秀一さん(学術情報メディアセンター)は、実験の目的を「機械学習などを使い、人が迷っていることに気付く前に、迷子の状態を検知する技術を開発するため」と説明する。
実験は3月12日、嵐山周辺での居住や通勤・通学経験がない人 (できれば、方向音痴の人)に、ある地点からある目的地まで地図などを使わず、自力で向かってもらう――という内容だ。人為的に迷子の状態を作り出し、参加者の位置情報などを取得。集めたデータをAI(人工知能)に学習させ、迷子かどうかを推定する技術の開発を目指す。
笠原さんは「修学旅行生の安全に責任を持つ教員などを支援することが開発の出発点」と話す。笠原さんらは2013年、班別行動中の生徒たちの位置情報を教員が把握できるスマートフォンアプリを開発した。
その際、引率する教員が、班別行動中の生徒たちが迷子になったり、事故に巻き込まれたりしていないか心配している――という課題を知ったという。学校の規模によっては生徒のグループ数が40を超えるため、人力で監視するのは難しいと考え、「計算機に迷子を探させよう」(笠原さん)と研究を始めたという。
将来は、迷子と推定されるグループを見つけたら引率の教員などに通知する、といった仕組みを想定している。
笠原さんは「教員の中には、道に迷うことも修学旅行の自由行動の教育効果と考える方もいる。一方、生徒に危険が及ぶことは避けねばならない」と話す。迷子になるとスマートフォンを見ることも忘れて、思いも掛けない行動を取る生徒や、地図を読めない生徒もいると、笠原さんは指摘する。
そうした生徒や、引率している教員に、迷い始めたことを注意喚起できれば、班別行動の時間が足りなくなる、危険な場所に立ち入るリスクを下げる、などのメリットがあるとしている。
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