田中 ビジネス抜きで考えれば、やっぱりAlphaGoなどゲームAIの応用である「DQN」(Deep Q-network。米Google系列の英AI企業DeepMindが開発した人工知能)です。DeepMindはGoogleのお金があるのでビジネス抜きでやれますけど、それをビジネスに応用するとなるとハードルが上がってしまう。いくら良い技術があってもそれをビジネスにできるかどうかは難しいですよ。
起業したときに「ビジネスはプロダクトアウトじゃダメだ、マーケットインじゃないと」と言ってきたコンサルタントがいたのですが、新しい技術はプロダクトアウト以外できないじゃないですか。特にAIやブロックチェーンのような新しい技術は目に見えないから、ある程度は形にしないと消費者が使い方をイメージできない。そういう意味では、AIはまだプロダクトアウトフェーズなんだろうなとは思います。
※プロダクトアウトは作り手の視点で商品開発を進めることで、マーケットインは消費者が必要とするものを提供するという考え方。
マスクド 新しい技術が出てきたからといって、すぐにビジネスになるわけじゃないんですよね。育てて育てて、ようやくビジネスで生かせる技術になる。
田中 本当にその通りで、ほとんどのAIがもたらしたビジネスインパクトって、2018年は経費と人件費削減止まりですよね。2019年もそうだと思いますよ。
マスクド 日本国内には多くのエンジニアがいますけど、AIによってサービスが劇的に良くなった、あるいは世界を制覇したのかと言えばそうではありません。技術が利益に結びついていないパターンがほとんどなんです。それはエンジニアの問題ではなく、指揮できる人がいないからですよね。世界を描ける人がいない。
田中 ビジネスの理解と技術の理解、双方がひも付かないと意味をなさないんです。双方の調整役がますます必要になるでしょう。でも、そういうことをうたっているコンサルタントってうさんくさい人も多いので(笑)。
マスクド AIディレクター、AIコーディネーターといった新しい肩書の人が増えるかもしれませんね(笑)。
田中 依頼する側も難しいでしょうね。どの会社が、どのぐらいの技術があるか分からないでしょう。大学受験のように偏差値が出ているわけでもないですから。
―― AIのビジネス活用を具体的にイメージできない企業は、「ところで事例ありますか?」と言いがちですが、他社の成功事例が自社にも当てはまるかどうかは分かりませんよね。最近は企業のAI導入事例を集めたビジネス書もあります。お二人は「事例くれくれ君」についてどう思いますか。
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