ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >

「AI人材がいません」「とりあえず事例ください」 困った依頼主は“本気度”が足りない AIベンチャーの本音これからのAIの話をしよう(AIベンチャー対談編)(2/4 ページ)

» 2019年03月06日 07時00分 公開
[松本健太郎ITmedia]
AI マスクド・アナライズさん

マスクド しかし、日本企業が社内の規定を無視してそういった新しい人材に高額な報酬を出せるでしょうか。

田中 トップ中のトップ人材はいまだに高給ですが、トップ校出身で新卒800万円だとどうでしょう。良い人材はいると思いますよ。弊社ではGitHubで見つけた海外の優秀な学生に声を掛けて月10万円〜ぐらいで手伝ってもらっていますよ。いままで遠隔で手伝ってくれていたトップ校のインド人の子が弊社に来ますし、ジェフリー・ヒントン教授(世界的に著名なディープラーニングの研究者)に学んでいた学生が手伝ってくれていたこともあります。

マスクド 世界に目を向けないと損ですね。

―― ところで、「AI人材」といわれる人にはどのような能力が求められるのでしょうか。

マスクド ビジネス系人材と技術系人材の橋渡しをする必要があるので、数学だけじゃなく国語力も欠かせないでしょう。求められるハードルはとても高いので、給料が高くて当たり前なんですよね。弊社も複数名のチームを組んで対応していて、苦手なところは得意な人に任せるようにして、ようやく回せてます。

田中  AIってディープラーニングという技術がすごいと思われてますけど、GitHubを見たらコードは大体ありますし、(コードの内容が)分からなかったら本人に聞けばいい。それよりもビジネス化に関していえば、ディープラーニングで学習させるデータの質の方が精度への影響は大きいですよ

 最先端技術は研究レベルで1%の精度を競っている場合が多い。現状を踏まえると、そういった部分は海外のオープンソースに頼み、日本ではデータの前処理に力を入れた方が現実的だと思います。

マスクド どれほどデータが大事だと言っても、アルゴリズムだディープラーニングだと言ってる人はいますね。プログラムで物が動くという旧来の情シス発想の人は多い。

田中 そうですね。例えばTwitterで投稿された文章をAIで解析することを考えてみましょう。そこに辞書にない顔文字が入っているとうまく文章を認識できないので、文章から顔文字を取り除くか、顔文字を学習データとして登録するかしないといけません。

 でも学習データを作るのが大変で、どのように顔文字と定義するかを決めないといけない。いかにして顔文字を顔文字として認識するアルゴリズムを考えるかは、それだけで1つの研究になります。前処理は最先端技術ではないですが、こういった細かいアルゴリズムの複合体で、ディープラーニングにデータを読み込ませるためにはすごく重要で精度に大きく影響します。前処理で自動化できない部分に関しては、手作業でデータを精製することもあります。

 ディープラーニンングの新しい技術は、論文が発表された数カ月後にGitHubに上がってたりするので、それを使えばいいと思います。

マスクド 結局、求める能力って突き詰めれば「目利き」になっちゃうんですよね。AIに限らず、特定の状況でどういう選択肢を取るのが最適かを考える上で、どれだけ引き出しがあるか。それがすごく大事なんです。

 例えば手書き文字の解析で言うと、田中さんであれば全ての手書き文字に対応できるようにするにはどうしたら良いか研究目線でアプローチをするでしょう。僕であればビジネス目線で「業務フロー自体を変えてはどうか」とアプローチをすると思います。

「すごい技術=ビジネスになる」わけではない

―― 田中さんは研究者として技術的なトレンドも追い続けています。ビジネスを抜きにして、いま最も面白いと考えている領域はありますか。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.