「日本企業のAI活用について物申す!」――AIベンチャー Shannon Lab代表取締役の田中潤さんとAIベンチャーで働くマスクド・アナライズさんで、AI開発の“リアル”に迫る本対談。
前回の記事では、「依頼主に時間を奪われるAIベンチャーの苦悩」「失敗を恐れすぎる大企業」「怪しいAIベンチャーの見破り方」について語っていただきました。
後編となる本記事のテーマは「AI人材不足に嘆くなら世界に目を向けよう」「すごい技術=ビジネスになるわけではない」「他社の成功事例をまねても意味がない」です。2019年以降のAI開発の在り方や、どういった点に注目してAI導入を進めていくべきかが分かる内容になっていると思います。
Shannon Lab株式会社代表取締役。アメリカの大学で数学の実数解析の一分野である測度論や経路積分を研究。カリフォルニア大学リバーサイド校博士課程に在籍中にShannon Labを立ち上げるため2011年帰国。人工知能の対話エンジン、音声認識エンジンを開発。開発の際は常にPythonを愛用。
著書に「誤解だらけの人工知能 ディープラーニングの限界と可能性」などがある。
AI、IoT、機械学習、データ分析などを手掛けるベンチャー企業に勤務。データサイエンス業界の動向や各社のニュースをSNSなどで発信している。ITmedia NEWSで「マスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!」を連載中。
いま話題のAI(人工知能)には何ができて、私たちの生活に一体どのような影響をもたらすのか。AI研究からビジネス活用まで、さまざまな分野の専門家たちにAIを取り巻く現状を聞いていく。
(編集:ITmedia村上)
―― 日本では、AIベンダーとユーザー企業共に「AI人材不足」といわれ、各社が激しい人材獲得競争を繰り広げています。優秀なAI人材を迎えるには、給与面での優遇なども必要になっているようです。AIを学べる大学の学部や大学院も増えていますが、まだ供給が追い付いていない状況です。
田中 アメリカや中国、インドなどではここ2〜3年でAI 関係の学部が新設され、大学でAIを学んだ人材が増え続けて供給過多になってきています。自著の「誤解だらけの人工知能 ディープラーニングの限界と可能性」を書いた2017年ごろに「新卒で年収1500万円クラス」と表現していた世界のトップ校出身のAI人材が、いまでは年収700〜800万円くらいの感覚です。そういった海外の人材を採用すればいい。ここ2年で状況が大きく変わってきています。
マスクド 海外のAI人材を日本企業で採用するのはハードルが高くないですか?
田中 人事部が、エンジニアや研究者のスキルについて分からないことが問題なんじゃないですかね? 「GitHub」(世界中の開発者がプログラムのコードを保存、公開しているWebサービス)にアップされているソースコードを見れば実力は分かります。
マスクド 採用面接でエンジニアがOKを出したのに、人事が技術的な所を分かっていなくて面接を落とされてしまった人の話も聞きます。AI人材を採用する体制が整っていない。
田中 世界に目を向けると良い人材はたくさんいますし、日本市場で小さなパイを奪い合う必要はないと思いますよ。
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