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Appleの純資産は7年前から減少? 投資家目線なら分かるその理由【全文公開】Appleの財務を分析する(4/7 ページ)

» 2019年03月13日 13時28分 公開
[hiroITmedia]

Appleは「いい意味で」投資より株主還元を優先

 では、Appleは次の成長を模索しているのでしょうか。答えはYesでもありNoでもあると思います。AppleはiPhoneに変わる新たなデバイスの開発を目指すのではなく、世界で9億台超が稼働するiPhoneを基盤に今後のビジネスを展開していくつもり、そう見えます。今後の買替需要と、AppStoreやAppleミュージックなどのサービス収入を収益の柱にする時代が長く続きそうな予感がします。

 なぜなら、AppleはiPhoneの販売で得たキャッシュを投資に回すのではなく、株主への還元に回しているからです。投資よりも株主還元を優先している現在の資本政策から、良い意味でかつてのイノベーティブ成長企業から脱却しているAppleの姿が垣間見えます。

 株式会社とは株主から資本の出資を受けビジネスを成長させるわけですが、究極的な目標は富を株主に還元することです。株主はリターンを得るためにリスクを取って資金を投資していますから、企業から利益の還元を受けることを求めます。

 ですが、企業は株主にお金を払い戻さない(=無配)ことも往々にしてあります。特に成長企業は無配なことが多いです。なぜ無配でも株主が納得するかといえば、今後の成長機会がたくさんあるからです。

 稼いだ収入を株主に返すよりも、将来への投資に使った方が結局は株主利益に適うという合意が経営者と株主間にあれば、無配企業は無配のままでいることが可能です。たとえば、AmazonやAlphabet(Googleの持株会社)は無配を貫いています。たとえ配当がなくとも投資が報われ利益が増えれば株価が上がります。株主は配当というインカムゲインを得られなくとも、株価上昇というキャピタルゲインが得られれば満足というわけです。

 では、Appleはどうなのでしょうか。Appleは2011年までは無配でした。1976年に創業してから35年間も株主には一切利益を返還することなく、未来への投資を続けてきました。その投資が大きく報われてきたのは前述の通りです。莫大な投資があったからこそ、Mac、iPod、iPad、iPhoneが生まれました。2000年当時からApple株を保有し続けた株主は、株価上昇で大きなリターンを手に入れることができました。そんな無配の成長企業だったAppleも、ついに2012年に配当を出しました。以降、現在まで毎年増配を続けています。

AppleのDPS(一株当たり配当)推移

(単位:ドル、ソース:Apple年次報告書)

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