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「意識変わった」「風邪が減った」 しっかり寝ると報酬がもらえる「睡眠報酬制度」を導入した企業の“その後”(2/2 ページ)

» 2019年03月13日 20時54分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]
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平均睡眠時間が6時間を超えて変わったこと

 睡眠報酬制度に参加した社員は、開始時で53人。繁忙期と重なる11月、12月で39人まで減少したが、直近の2月には49人まで回復している。制度運用を担当する増田氏は、「当初は物珍しさもあって試してみたい社員が多く、繁忙期を経て本気で取り組んでいる人だけが残った形。1月には睡眠報酬制度の表彰などを行ったので、改めて参加する気持ちになった社員が増えたのだと思います」と分析している。

睡眠報酬制度に参加した社員数の推移

 全参加者の平均睡眠時間は11月まで5時間台をウロウロしていたが、12月に初めて6時間を超えた。結果を発表すると社内が沸いたという。「社内でも6時間という言葉をよく聞くようになりました。2月は新規事業の立ち上げもあって少し下がりましたが、6時間以上をキープできています」と増田氏。3カ月に1度のアンケート調査でも「風邪を引く回数が減った」「睡眠時間の短い人がいた場合、チーム内で仕事の割当を変えるようになった」など前向きな意見が多かったという。

平均睡眠時間の推移

 「意識の変化を挙げる社員もいます。今まではやらなければならない仕事を積み上げ、残りの時間を睡眠に当てていたのですが、今は6時間の睡眠を確保した上で仕事量を決めるようになったと話していました。調子の悪い日にはパフォーマンス低下の原因が睡眠時間だと正しく認知できるようになった点は大きいと思います」

 報酬は社内のカフェや食堂で利用できるポイント、いわば社内通貨で支払われる。1週間のうち、6時間を超える睡眠をとった日が5日間なら500ポイント、6日間で600ポイント、7日間なら1000ポイントを付与。また1カ月間、毎日計測した社員には継続ボーナスの「皆勤賞」1000ポイントを追加する。

睡眠に会社は介入すべきか

 これまでに最もポイントを獲得した社員は4100ポイント。1カ月のうち、25日間で6時間以上の睡眠を確保した。

 会社が支払ったポイントの合計は月間1万5000近くまで増えてきたが、森山氏は「もっと支出するべきだと思う」と話す。「睡眠報酬制度は、産業医とも連携しています。社長には個人のデータを見る権限はありませんが、産業医はチェックできて健康状態が気になる人がいたら声をかけますから労務管理にも役立ちます」(森山氏)。だからこそ社員全員に取り組んでほしいという。

 社員の参加を促すため、今後はポイント付与の仕組みに若干手を入れる。現在は最低1週間は継続しないとポイントが発生しない仕組みだが、これからは1日でも6時間を超えたら即座に100ポイントを付与する考え。将来的には社員の運動量に応じたポイント、食事に関するポイントなども追加し、総合的な健康ポイント制度に育てていきたいという。

 「睡眠はプライベートな部分なので会社は介入すべきではない、という意見もあります。しかし、ホワイトカラーの人口が増えるにつれ、個人と仕事の時間を分けられない仕事も増えています。会社で処理しきれない仕事を自宅に持ち帰るなど、プライベートにも仕事が入っている——その前提で健康を考えるべきでしょう。だとしたら、とくにクリエイティブな仕事では(睡眠報酬制度は)検討に値する制度だと考えています」(森山氏)

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