「技適(技術適合証明)」のシバリが緩和され、日本未発売の技適未取得の最新デバイスが、誰はばかることなく大手を振って使えるようになる。政府は、第198回通常国会に電波法の改正案を提出した。
電波利用料や周波数の割当制度の見直しなど、人工知能やIoT社会を見据えた内容が盛り込まれている。技適の要件緩和を規定した特例制度もそのうちの1つで、この改正電波法が施行された暁には、技適未取得の無線端末であっても、合法的に利用可能な道が開けることになる。
本稿では、前後編に分け、前編では、今回の特例制度の内容について、後編では、総務省令改正が同時進行している、IoT端末を意識した技適マークの表示方法について解説する。表示方法のあり方を知れば「技適」という制度の成り立ちや意義を垣間見ることができる。
最初に、今回の特例制度の概要を説明しよう。例えば、日本人のあなたが、日本未発売の技適未取得端末を海外から個人輸入したとしよう。現行の電波法の下では、国内で電源をオンにした時点で違法の恐れあり、と判断される。
しかし、今回新設される特例制度を利用し、総務省に所定の項目を届け出ることにより、最大で180日間は合法的に電源をオンにして使うことができる。まさに、最新ガジェットを誰よりも早く試したいマニア、新しいアプリやサービスを開発したい人や企業にとっては、願ってもない制度なのだ。
これまで、Google GlassやMicrosoftのHoloLensといった話題のデバイスが技適未取得であったり、取得が遅れたことで、アプリやサービス開発の面で日本が不利な状況に置かれたこともあった。最近では、Androidアプリ開発のリファレンス機「Pixel 2」の技適未取得事例も記憶に新しい。また、Appleのスマートスピーカー「HomePod」の例もある。米国や欧州に続きアジア圏では、中国や香港で販売が始まったものの、日本発売の声は聞こえてこない。一部の最新ガジェットにおいて、日本で発売されないままスルーされていく「ジャパンパッシング」が進みつつあるなかでの歓迎すべき制度整備だといえよう。
現行法制下でも、実験試験局免許の取得や電波暗室等を利用することで未取得端末の試験を実施することはできるが、期間やコストの面で高いハードルが存在したことは事実だ。総務省総合通信基盤局電波部電波政策課企画官の片桐義博氏は「最新端末において日本がスルーされる状況において、イノベーションの促進は望めない。この制度を設けることで、最新端末を用いた実験やサービス開発を早期に着手可能な環境を作ることができる」と期待を込める。
ここまで読んだ読者の中には、「とはいえ企業向けの制度で、個人が気軽に利用できるの?」という疑問を持った人もいるかもしれない。だが安心してほしい。個人ユーザーでも制度の利用は可能だし「届け出制なので費用は発生しない」(片桐氏)と、嬉しいことを言ってくれる。
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