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「依存症に厳しすぎる制裁」 ピエール瀧出演作の自粛撤回、依存症支援団体が要望

» 2019年03月28日 10時47分 公開
[岡田有花ITmedia]

 ミュージシャンで俳優のピエール瀧氏が麻薬取締法違反の疑いで逮捕されたことを受け、出演作品の撮り直しや販売停止など自粛が相次いでいる問題で、依存症関連の市民団体や当事者団体、治療者らの有志で結成する「依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク」が、自粛を撤回するよう求める要望書を、NHKなど5社・団体に送付したと発表した。

 相次ぐ自粛は「薬物事犯となった芸能人へのあまりにも厳しすぎる制裁」と指摘。「薬物使用が発覚したら社会的に抹殺されるという恐怖感があおられ、相談や支援に繋がる勇気を阻害し、孤立を招いて問題を悪化させる」などとし、自粛を撤回するよう強く求めている。

画像 要望書より

 送付先は、ドラマ「いだてん」を撮り直したり、ドラマ「あまちゃん」などの配信を停止しているNHK、PlayStation 4ゲーム「JUDGE EYES:死神の遺言」の販売を自粛しているセガゲームズ、電気グルーヴのCDなどを出荷停止しているソニーミュージックエンターテイメント、4月から放送予定だった「ゲンバビト」を自粛したTBS、5月公開の映画「居眠り磐音」を撮り直すと発表した松竹。

 要望書で団体は、薬物事犯となった芸能人が「仕事の表舞台から排除され、ワイドショーなどで悪のイメージが繰り返し強調される」ことによって、「重大な犯罪というイメージが必要以上に増幅され、家族も周囲から白眼視される」だけでなく、「薬物使用が発覚したら社会的に抹殺されるという恐怖感があおられ、相談や支援に繋がる勇気を阻害し、孤立を招き、問題を悪化させる」と懸念する。

 欧米など諸外国では、芸能人の薬物問題が発覚して出演作品の販売や公開が自粛された例はないという。米国の人気ドラマ「フレンズ」に出演したマシュー・ペリー氏は薬物依存症に陥ったが、撮影中2度もリハビリ施設に入寮しながらも出演は継続。依存症から回復し、後に依存症者の支援を行ってオバマ大統領から表彰された――など、依存症から回復し、ほかの依存症患者を助けた海外の芸能人の事例もあるという。

 日本では、このような事例とは真逆に「罰すること・懲らしめること・辱めを与えることで、薬物問題に効果があったかのような誤った考えがあるように思える」と指摘。「刑罰以外にも、民間人による自粛や撤収、撮り直しといわれる実質的な制裁措置が常態化してしまえば、薬物問題は解決どころか弊害の方がますます大きくないく」と懸念し、「現在の制裁措置を取り止めて頂けるよう強く要望する」としている。

 ピエール瀧氏逮捕後の出演作品自粛をめぐっては、「作品に罪はない」「過去作品まで自粛するのはやり過ぎでは」などと議論に。大半の放送局やコンテンツ企業が自粛に流れる中、東宝は出演映画「麻雀放浪記2020」を4月5日に予定通り公開すると発表するなど、自粛を避けた例も出ている。

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