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「幻滅期」は来るのか? RPAの未来を予言してみる特集・RPAで仕事が変わる(2/3 ページ)

» 2019年04月03日 07時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

 確かに長い目で見れば、RPAとAIが融合していくのは必然だろう。しかし景気の良い話をしておいて恐縮だが、RPAは間もなく“幻滅される”時期を迎えるという予想もある。調査会社のガートナーが18年10月に発表した、「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2018年(PDF)」において、RPAはちょうど「幻滅期」に差し掛かる直前に位置付けられているのだ。

 幻滅期とは、新たに登場したテクノロジーに対して過剰な期待が寄せられた結果、それに応えられず逆に失望が広がる時期とされる。実際に矢野経済研究所のレポートでも、2019年度の国内RPA市場は537億円になると予測されており(前年比約28%増)、市場は拡大しつつもそのスピードが急速に鈍化すると考えられている。

 実際、既存のRPA導入プロジェクトの実情に注目してみると、「思ったように自動化が進まなかった」「予想外の手間がかかった」といった声が聞かれることも珍しくない。現状のRPAは、先ほどの3段階の分類における「クラス1」、すなわち定型的な作業を任されることがほとんどだ。それでも導入に苦労し、期待を幻滅に変えてしまう企業がある状況では、より高度なRPAの導入に成功する例はさらに少なくなる恐れがある。

 ただAIを活用することで、逆に幻滅を乗り越えられる可能性もある。

RPA運用の難しさをAIでカバーできるか

 RPA導入プロジェクトが始まり、ユーザーが特に驚くことの1つが、ロボットを開発して運用を続けるのに必要な負担が意外に大きいことだ。例えば、あなたは毎週決まったタイミングと条件で、自社開発した社内システムから特定のデータをダウンロードしているとしよう。

 作業は簡単で、社内システムを立ち上げ、抽出条件をインプットして「ダウンロード」ボタンを押すだけである。多くのRPA製品は、人間が実際に画面上で操作した内容を記録し、そのままロボットに置き換えてくれる機能を提供している。

 しかし、実際に自動化したい作業を実演してみせ、生成されたロボットを動かしてみると、正しく動かなかったり、そもそも操作したいシステムを正しく認識してくれなかったりする場合がある。

 RPAが操作対象を「認識」する仕組みは製品によって異なるため、その理由は1つではないのだが、例えばPC上の画面を画像解析して操作すべきメニューやボタンを把握している場合には、ちょっとした画面上の表示の違いがロボットの挙動を惑わせてしまう。

 それを防ぐためには、各RPA製品の癖や操作対象システムとの相性を熟知した開発者が必要だ。しかしRPAは「簡単な設定で自動化が実現できる」ことをうたう製品も多く、システム部門でなはく現場部門主導で導入が進められる場合も多い。すると「現場の判断で簡単に業務自動化が進められるはずだったのに、これでは話が違う」ということになり、ユーザーの幻滅をさらに進めてしまうことになる。

 そうした事態を防ぐために、より設定しやすいRPA製品を実現する手段としてAI技術を使うRPAベンダーも現れている。例えばUiPathでは、前述した画像分析の精度を上げる「AI Computer Vision」というアドオンを発表している。

 彼らの説明によると、これはUiPath社の「マシンラーニング部門の独自開発によるコンピュータ・ビジョンニューラルネットワークを使用」しており、ボタンやテキスト入力フィールド、チェックボックスなどのUI要素をより正確に把握できるそうである。これはユーザー自身がロボットの設定を容易に行えるようになることを意味する。

 このような進化が続くことで、RPA特有の「メンテナンスに予想外の負荷がかかる」問題を解決できるのではないかという声もある。現状では、例えば「ダウンロード」ボタンの位置が右から左に移るなど、RPAが操作する対象のシステムに何らかの変更が加えられた場合、設定済みのロボットが停止してしまう場合がある。

 もちろん各社は、軽微な変更であればそれに対処できる仕組みを提供しているが、AI技術を使うことでそれがより高度になる(自ら変化した状況に対応してしまうようになる)のではないかと期待されているのだ。

RPA化する業務をAIが分析

 またRPA化する業務を選ぶ際に、AIを活用しようという動きもある。RPA化対象業務を社内からどのように探せば良いのかは、ユーザー企業各社が苦労している問題だ。導入効果が高く、購入したRPA製品と相性が良くて、容易に開発できる業務を探すために膨大な時間と労力をかけてしまった――などという本末転倒な話すらある。

 そこで社内で使用されるPCの操作ログを何らかの形で集めてそれをAIに分析させ、定型業務を洗い出そうという取り組みが、一部のRPAベンダーや導入支援サービス業者、ITコンサルティング会社から生まれている。

 これがうまくいけば、せっかくロボットを作ったのに大きな効果が得られなかった、といったRPA開発コストの無駄遣いも解消されるだろう。

 こうした「RPAの導入・活用そのものをAIで支援する」取り組みが進むことで、RPAが幻滅の谷を越え、より本格的な業務効率化の手段として定着する日が近づくはずだ。そのころには、人間に作業を指示するような感覚でロボットの「開発」ができるツールになっていくだろう。

RPA+AIが実現された世界の働き方

 RPAとAIの融合が進み、RPAが幻滅期を抜けたとき、私たち人間はどのような働き方をするようになるのだろうか。

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