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RPAで仕事が変わる ロボットと始める働き方改革

「幻滅期」は来るのか? RPAの未来を予言してみる特集・RPAで仕事が変わる(1/3 ページ)

» 2019年04月03日 07時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

 RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入が拡大している。今年2月、矢野経済研究所は国内のRPA市場に関するレポートを発表し、2018年度の同市場規模が前年度比134.8%増の418億円になると予測した。17年に比べて倍以上の拡大ということで、いかにRPAが注目を集めているかが分かるだろう。

RPA 矢野経済研究所の発表

 RPAは人間がPC上で行っている操作を、ソフトウェアで自動化するツールだ。マクロやテスト自動化ツールが高度化し、多種多様な作業をより簡単に自動化できるようにしたアプリケーションと考えると理解しやすいだろう。

 後述するように、一部では「RPAは幻滅期に入りかけている」とみる動きもあるが、まだまだRPAに期待する声は根強い。RPAが注目される理由はさまざまだが、今回はこれからRPAがどう進化していくのか、それによって私たちの働き方がどう変わるのかを考えてみたい。

「クラス2」へ向かうRPA

 RPAは今後、AI(人工知能)と融合し、より複雑な作業もこなせるようになる――いま多くの人々がこう主張し、RPAの進化を予想している。例えば総務省はRPAの解説ページにおいて、RPAの技術レベルを3つに分けるモデルを紹介しており、最高位となる「クラス3」では、「プロセスの分析や改善、意思決定までを自ら自動化するとともに、意思決定」を行うようになるとしている。

RPA 総務省はRPAの進化を3段階に分けるモデルを紹介

 こうした予想もしくは期待に呼応するかのように、このところRPAベンダー各社は、AI技術への対応を積極的に進めている。特に目立つのは、前述のモデルで言う「クラス2」に当たる、非構造化データへの対応だ。

 例えば英国のRPAベンダー大手のBlue Prismは昨年11月、「Blue Prism Digital Exchange(DX)」というサービスを立ち上げた。サイト内では「AIやコグニティブなど、革新的なテクノロジーを利用・共有するためのオンラインマーケットプレイス」と解説されている。サードパーティーが開発した、Blue Prismに組み込み可能なAI機能を探せる場所だ。ユーザーはこれを通じて、AI-OCRや自然言語処理、感情分析といった機能をRPAツールに簡単に組み込めるようになる。

 また日本でシェアを急速に拡大している米UiPathも、今年1月、日本のベンチャー企業AI insideが提供するAI-OCRソリューション「DX Suite」との連携を実現する開発キットの配布を開始した。これにより同社のRPA製品「UiPath」上から、API連携によって簡単にAI-OCRを利用できるようになるそうだ。

 人間が行う業務のプロセス内には、何かしらの非構造化データが関係するステップが発生することがある。例えば顧客からのリクエストやクレームをお客さま窓口で受け、クレーム内容を手書き書類にし、関係部署に送付するといった具合である。

 もちろん最近では全ての工程がデジタル化され、手書き書類など発生しないことの方が普通だろう。しかし特にRPAの導入が検討されるような「隠れた定型作業」では、これまで人間が担当することで表に出なかった「隠れた非構造化データ」が存在することが珍しくない。またそこに一定のルールを当てはめ、データを構造化しようとしても、「他の会社が書類を作成するためルールを強制できない」といった話になることも多い。

 それをRPAで対応可能にすることで、RPAを導入できる業務の範囲は大きく広がる。例えばみずほフィナンシャルグループは、AIベンチャーのギリアらと共同で、AIとOCR、RPAを組み合わせた手書き・非定型帳票のデータ入力を自動化するシステムを開発し、「AOR(AI+OCR+RPA)ソリューション」と名付けた。

 口座振替依頼書(これは発行する事業者や自治体でフォーマットがバラバラで、みずほ銀行内では数十万種類に達していたそうだ)の読み取りと内容登録を対象にした実証実験では、人による手入力作業がおよそ8割削減できる効果が認められたと発表している。

 みずほフィナンシャルグループは、この「AORソリューション」を他の地域金融機関に提供することを検討している。要は金融機関向けの業務に特化したRPAを、AIとOCRを活用して開発・パッケージ化し、それを外販するというわけだ。今後はこうした業界・業務に特化したRPAパッケージも増えてくるだろう。

「幻滅期」を乗り越える

 これでますますRPAに対応可能な業務が増え、さらにRPAの導入が加速する――果たしてそうスムーズに進むだろうか?

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