特にTwitterにおいては、もはや文字は読まれず写真がなければ目にとまらないためか、「画像」を使ったウソがたくさん投稿されています。その中には、企業の公式サイトのページを基にウソの文言を追加したスクリーンショットもありました。このようなフェイク画像はHTMLをPCでローカル保存して書き換えるまでもなく、スクリプトを使って作れます。
ただし、こういった文字書き換えによるスクリーンショット投稿は、元となった公式サイトにとっては迷惑でしかありません。全ての人がエイプリルフールのユーモアや皮肉を投稿者の意図通りに受け取るわけではありませんので、ジョークのつもりでやったことでも、結果的に公式サイト運営者に問い合わせ対応などの負担を強いる可能性があります。これこそ、マイクロソフトが危惧していた、“フェイクニュース”化する危険性をはらむ行為です。
特に最近では、国家の治安を維持する警察組織によるIT関連捜査にて、単にダイアログを表示しつつける無限ループスクリプトが問題視された事件も起きています。こういった状況もあり、ジョークによる投稿に対して私自身も少々萎縮しているというのが現状です。ふざけたつもりが大事故に、ということは避けたいですからね。
ネットにおいても時代は変化しつつあります。2009年、まだねとらぼがITmedia NEWSの一部だったころのエイプリルフールは、発信する側も受け取る側も一定のリテラシーを持った人たちによるものでした。ただ、こういったユーモア自体を自粛しようとなると、それはそれで寂しい気もします。企業組織はより慎重にならざるを得ないので、そのユーモアをエイプリルフール単日だけでなく、製品やサービスそのものに込め、アピールしてほしいですね。
では個人はどうすべきでしょうか。個人的な考え方では、そういったユーモア、ブラックジョーク、皮肉などほんの少しでも他者に影響を与える可能性があるのならば、世界に向けて発信するのは熟慮すべきだと思います。
クローズドな場所で信頼できる知人に披露するくらいが、いまのネットでできる落としどころでしょう。もはやTwitterやFacebookはつながりすぎていますので、誰が何を拡散してしまうのかのコントロールが難しいです。ただし、「鍵アカ」だからと無責任に発信するのも考え物。いまや鍵アカの投稿をスクリーンショットで拡散しようとする「ユダ」的フォロワーがいないとも限りません。
結果として、昔ながらの家族に口頭でウソをつくくらいのエイプリルフールがちょうどよかったりするのかも。ジョークとフェイクニュースの境目があいまいになっているいま、他人に迷惑がかからない範囲でこういったジョークを楽しみたいですね。
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。
2019年2月1日に2冊目の本『Q&Aで考えるセキュリティ入門 「木曜日のフルット」と学ぼう!〈漫画キャラで学ぶ大人のビジネス教養シリーズ〉』(エムディエヌコーポレーション)が発売。スマートフォンやPCにある大切なデータや個人情報を、インターネット上の「悪意ある攻撃」などから守るための基本知識をQ&Aのクイズ形式で楽しく学べる。
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