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» 2019年04月17日 07時00分 公開

「発想の転換がすごい」 スライドさせて印刷するプリンタ、ネットで大反響 苦節5年、開発の舞台裏 (2/3)

[片渕陽平,ITmedia]

 ただ、ニーズがあるかは分からなかった。原田さんは、商品企画を担当している近藤友和さん(オフィスプリンティング事業本部 商品戦略センター)に相談し、需要の有無を調べることにした。近藤さんは当時、リコーの販売子会社であるリコージャパンから異動になったばかりで、営業部門への人脈があった。近藤さんの人脈を生かすことで、原田さんは営業の客先訪問に同行し、意見をヒアリングした。

 原田さんが製品の構想を語ると、客先からの反応は上々だったが、二言目には「どこで使えるのか」と返ってくるのがお決まりだったという。それでも客先の業種ごとに仮説を立ててはアプローチし、“使えない理由”を聞いて回った。こうして集めた意見を開発中のプロトタイプに取り入れ、機能やデザインを洗練させていった。

 数百社を巡る中で、思いもよらないニーズも浮かび上がってきた。訪問介護では、看護師などが要介護者の家族に「連絡ノート」を手渡す。例えば「右足大腿部に処置を施しました」というようにメモを残すが、こうしたメモは手書きのため、看護師にとっては大きな負担だ。モバイルプリンタを使えば、そうした負担を軽減できる上、人体図などの画像を印刷し、処置した場所を図示すれば、家族側の理解も得やすくなる。介護現場からは「絵心がなくても使える」と好評だった。

photo 人体図などの画像も印刷できる(リコーの動画より)

 物流の現場では段ボールにバーコードやQRコードを印刷するというニーズもあると分かり、専用スマホアプリの機能を見直すなどした。「客先での意見を基に、機能を追加していった」(原田さん)

 リコー社内では3カ月間に1回、原田さんの上司が開発を続けるかどうか判断を下す場があった。客先訪問で集めた“生の声”は、そうした場面でも役立った。無駄な投資はできない中、機能の開発が思うように進んでいなくても「需要がある」と説得できた。原田さんは「プロダクトアウトで始めた企画だったが、マーケティングと両輪で進められたことが開発の継続につながった」「ギリギリで望みをつないできた」と振り返る。

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