「第2のビジョン・ファンドをこれから立ち上げる」――ソフトバンクグループの孫正義会長は5月9日、決算説明会でこう宣言した。“10兆円ファンド”こと「SoftBank Vision Fund」(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)と同程度の規模を想定し、AI(人工知能)関連のユニコーン企業を中心に投資を加速させる。
決算説明会の冒頭、孫会長は「ソフトバンクグループの株主価値は23兆円。この数字だけ覚えてほしい。きょうの決算発表では細かな数字を出すが、私に言わせれば『どうでもいい数字』だ」と発言。経営者として株主価値の最大化を重要視しているとした。その上で、孫会長は「これから株主価値を高めていく成長エンジンになるのがビジョン・ファンド」と力説する。
ビジョン・ファンドは、AI関連のユニコーン企業に特化して投資していることが特徴だ。孫会長は、ソフトバンクグループの組織モデルとして「AI群戦略」を掲げ、交通、不動産、医療など各分野でナンバーワンの企業を手元に集めている。「(投資先は)ナンバーワンの企業ばかりだ。私はナンバーツーの企業が嫌いで、性格的に受け入れられない。やる以上はナンバーワンにならないと気が済まない。子どものときからそうだ」
この勢いを加速させるため、第2のビジョン・ファンドを設立する考えだ。具体的な規模や時期、戦略はこれから詰めるという。孫会長は「2019年現在、世界の時価総額トップ10のうち7社はインターネット関連の会社だが、これらが革新を起こした分野は小売りと広告だけだ」と指摘。「(投資先の)AI関連企業は、あらゆる産業に革新をもたらす」と優位性を強調する。
第1のビジョン・ファンドは、4兆円が優先出資で、残りの6兆円が普通出資(株式会社の普通株に相当する)。孫会長は「ビジョン・ファンドが大きく利益を上げた場合、その大半は普通出資の出資者に配分される。このうち48%がソフトバンクグループの株主に帰属している」と説明する。これらを考慮すると「(ソフトバンクグループ株主にとって)利回りは62%になる」という。
ソフトバンクグループの19年3月期(18年4月〜19年3月)連結決算では、ビジョン・ファンドとその兄弟ファンド(Delta Fund)による投資で得た営業利益が1兆2566億円あり、増収増益に貢献している。
「ビジョン・ファンドを作り、巨額を荒っぽく投資していると批評もされた。62%という数字は出来すぎだが、高い収益を上げていることを分かってほしい」(孫会長)
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