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「AIと倫理は経営課題」弁護士が警鐘 「日本企業はもっと真剣に取り組むべき」(1/2 ページ)

» 2019年05月20日 07時00分 公開
[村上万純ITmedia]
AI(人工知能)に詳しい三部裕幸弁護士

 「AIと倫理について考えることは、企業の経営課題である」──AI(人工知能)に詳しい三部裕幸弁護士は、4月25日にABEJA主催のセミナーで、こう語った。「倫理と聞くと慈善事業のように思う人が多いが、そうではなく企業のトップが真剣に取り組むべき経営課題と認識すべき」と指摘する。

 ここでいう倫理は道徳のようなものではなく、プライバシーの保護や公平性、安全性やセキュリティの確保などに関わるもっと具体的なものだ。例えば、望まない形で個人情報を流出させない、AI利用で国籍や性別などの差別を助長しない、自動運転車などで人間の安全を脅かさない、といったことを企業は意識しなければならない。

 実際に、上記の例では被害を受けた人からの損害賠償請求やクレームなどのリスクがあり、企業側は社会的な信用が低下するだけでなく、場合によっては事業の撤退を余儀なくされることすらあるだろう。

倫理とは

 三部弁護士は「ここでいう倫理は、一般的な倫理の概念より広い意味で、人類が長い歴史の中で営々と築き上げてきた大事な価値観のようなものと考えてほしい」と話す。

「日本企業は倫理の視点がない」

 三部弁護士は、総務省の「AIネットワーク社会推進会議」から技術動向などの調査依頼を受け、2016年と18年に欧州の企業や大学、研究機関、法律事務所などを訪問した。

 英国、ルクセンブルク、ドイツ、フランスの4カ国で話を聞くと、どの国も口をそろえて「AIと倫理」について考えることの重要性を説いたという。三部弁護士は「当時はなぜ弁護士が倫理について調査するのか理解できず、法律に関する話も技術寄りになると思っていたが実際は全く違った」と当時を振り返る。

 「日本に優れた技術や製品があっても、倫理(Ethics)を考慮しないとそれは売れないし、受け入れられないリスクがあると言われた。日本企業と意見交換をしている現地企業も多かったが、日本は倫理の視点が議論に全く出て来ないので、日本企業と組むことにちゅうちょしている様子だった」(三部弁護士)

 日本企業は、海外に比べてAIと倫理に関する意識が薄い印象を持たれているようだ。

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