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「はやにえ」を食べたモズは、イケボでモテる 大阪市立大の研究

» 2019年05月22日 12時13分 公開
[ITmedia]

 獲物を枝に突き刺した「はやにえ」をたくさん食べたモズのオスは、歌がうまくなりメスにモテる――大阪市立大学がこのほど、そんな研究成果を発表した。縄張りにエサを蓄える行動はモズ以外にも見られるが、「オスの性的な魅力を高める効果があると実証したのは世界初」という。

photo モズは、バッタなどの獲物を木々に突き刺して「はやにえ」を作る習性で知られる

 はやにえは、モズが捕らえた獲物を縄張りの木々に突き刺したもので、エサが少ない冬に備えた保存食と考えられてきた。研究チームが大阪府の里山で観察したところ、繁殖期が始まる1月ごろまでに、ほとんどのはやにえが食べ尽くされていた。

photo モズのはやにえ生産量と消費量の季節変化と気温の関係。横軸の数値ははやにえ調査を行った月を表す。白の棒グラフははやにえの生産数(平均値±SD)、赤の棒グラフははやにえの消費数、青の折れ線は最低気温の平均値を表す=大阪市立大学の発表より

 モズのオスは、栄養状態がいいとさえずりのスピードが速くなり、メスに好まれることが知られている。そこで研究チームが、モズのさえずりの速度とはやにえの消費量の関係を調べたところ、消費量が多かったオスほど早口だと判明。はやにえは保存食という役割に加え、メスにモテるのにも役立っていると分かった。

photo モズのオスの歌のスペクトログラム。上図は歌唱速度が速い、下図は遅い歌の例。横軸は時間(秒)、縦軸は音の高さ(kHz)、色の濃さは音量の大きさ(U)を表す。歌唱速度とは、オスが1秒間に発した音数の多さを表す歌特徴。歌唱速度が速いことは「早口」で歌うことを意味する=大阪市立大学の発表より
photo はやにえの消費量と歌唱速度の関係(左)と実験群ごとのオスの歌唱速度(右)=大阪市立大学の発表より

 これらの野外観察に加え、研究チームは、縄張り内のはやにえを取り除いたモズ(除去群)、通常消費するはやにえの3倍のエサを与えたモズ(給餌群)、はやにえの数を調整していないモズ(対照群)を用意して、さえずりのスピードを比較した。すると、対照群と比べて除去群はさえずりが遅く、逆に給餌群は速くなることが明らかになった。

 除去群、対照群、給餌群のオスが、メスを獲得した成功率、時期も観察した。対照群と比較し、除去群はメスの獲得に失敗しやすい一方、給餌群は成功率が高く、より早い時期にメスを獲得できることも分かった。

 研究成果は、国際学術誌「Animal Behaviour」(電子版)に5月1日付で掲載された。

photo 実験群ごとの、つがいメスの獲得成功率。%の値が大きい群ほど、多くのオスがメス獲得に成功したことを意味する。例えば、除去群の25%は、除去群の8個体中2個体のオスがメス獲得できたことを意味する=大阪市立大学の発表より
photo 実験群ごとの、オスがつがいメスを獲得した時期。縦軸の値が小さいほど、オスが早い時期にメスを獲得できたことを意味する。調査は4日に1回行ったので、このメスの獲得時期は4日間隔でまとめている。例えば、獲得時期「1」は「2/1〜2/4」のあいだに、獲得時期「2」は「2/5〜2/9」のあいだに、メスを獲得できたことを意味する=大阪市立大学の発表より

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