ITmedia NEWS > STUDIO >

「Oculus Quest」でVR体験が“爆上げ” 約5万円で最高級を楽しめる新時代に突入 その魅力に迫った(2/4 ページ)

» 2019年05月30日 07時00分 公開
[山口恵祐ITmedia]

スマホVRや「Oculus Go」とは完全に異なる体験 鍵は「6DoF」

 ハイエンドVRが進化を続けてきた中、もっとお手軽に体験できるVRヘッドセットといえば、専用レンズが組み込まれた簡易ゴーグルにスマートフォンを差し込んで使うスマホVRや、単体で動くスタンドアロンVRヘッドセットの先駆けとなった「Oculus Go」などがあります。

 これらもVRの一種ではありますが、顔を向けた方向に合わせて360度映像が連動したり、映像を立体的に見られたり、片手で使うリモコンで簡単なゲームや操作ができたりするだけで、映像ビュワー的要素が強い製品でした。

photo 2018年に映像ビュワーとして人気を集めた「Oculus Go」(左の2台)

 確かにVRをどこでも手軽に体験できるものとしては優れていましたが、ハイエンドVRに慣れた人の中には、スマホVRやOculus Goだけを体験した人に「VRって360度の動画が見られる程度か」と勘違いされたくないと、実はこっそり思っていた人も少なくないはずです。私も周囲の人に本当のハイエンドVRを体験してもらうため、重いゲーミングノートPCやハイエンドVR一式を苦労しながら持ち運んだ経験があります。

 なぜスマホVRやOculus Goと、ハイエンドVRでは体験が大きく異なるのか。それは、検知できる動きの数が違うという点が挙げられます。スマホVRは頭の回転(左右)と傾きの3DoF(3自由度)のみ検知できるものがほとんどで、その場で周囲を見渡すような動きしかできません。コントローラーも空間に現れるポインターを動かすためのリモコンのようにしか使えません。すぐに飽きてしまいます。

 一方、ハイエンドVRは頭の回転と傾きに加えて、位置の移動を含めた6DoF(6自由度)の検知に対応しています。つまり、プレイヤーはVRの中を自分の足で動き回れるのです。

photo 3DoFと6DoFのイメージ

 キャラクターの後ろに回り込めば背中が見えたり、物陰に隠れて相手の攻撃をやり過ごせたり──現実での動作がそのままVRの中にいるキャラクターに反映されるのが6DoFの世界です。

 これまでは外部センサーなどの設置で実現していた6DoFですが、スタンドアロンのOculus Questでは、本体に搭載した4つのカメラで撮影した映像を解析して、プレイヤーやコントローラーの位置を推定する「インサイドアウト方式」を採用して実現しました。

photo Oculus Quest本体には4つのカメラが搭載されている

 センサー不要で手軽な半面、本体カメラで位置を特定する仕組みのため、環境によっては自身の位置を極まれに見失うことがあります。そして真っ暗闇では使えません。この方式は特段新しい技術ではなく、Windows 10が標準対応している「Windows MR」デバイスや、新型の「Oculus Rift S」などでも採用されています。

 同様にハンドコントローラーも6DoF対応で使い勝手は抜群にいいです。Oculus Questには「Touchコントローラー」が2本付属していますが、これを使うと「手を握る、指を差す、親指を立てる」といった動作がVR空間でも自然にできます。

photo Oculus Questに付属する「Touchコントローラー」。振動によるフィードバックにも対応

 3年前にハイエンドVRで感じた次のような感覚が、Oculus QuestのようなスタンドアロンVRヘッドセットでも体験できることに感動すら覚えます。

地面に落ちている銃を拾おうとしたときに「手を握る(銃をつかむ)」という手の動作感覚が現実世界と限りなく同じなのだ。「ゲーム中で銃を拾う操作方法を覚える」のではなく、現実と同じ「拾う」という体の動作がそのままゲームに適用できる。この感覚は奇妙で、エキサイティングだ。


 Touchコントローラーを有効に使える一つのアプリとしてぜひ試して欲しいのが、GoogleがリリースしているVRお絵かきアプリ「Tilt Brush」です。ハイエンドVR向けのアプリでしたが、Oculus Questに移植されました。

 VR空間に絵が描ける感覚は驚きの一言。Oculus Quest版の登場で、場所を問わず、ケーブルから解放された状態でVRお絵かきが楽しめるようになりました。これもOculus Quest唯一の体験です。

photo VRお絵かきアプリ「Tilt Brush」も最高の体験です

 VRの中で歩き回ったり、両手が使えたりする感覚は、没入感を高める上で非常に重要です。スマホVR/Oculus Go(3DoF)とOculus Quest(6DoF)では、客席から見る野球観戦と、実際にグラウンドに立って野球をプレイするぐらいの差があります。スタンドアロンで場所を問わずに高度な体験ができるようになったOculus Questは、まさにハイエンドVRが普及するキラーデバイスなのです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.