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白黒映像をAIで自動着色 NHKの技術を記者が体験技研公開2019

» 2019年05月30日 13時21分 公開
[谷井将人ITmedia]

 NHK放送技術研究所は5月28日、研究公開イベント「技研公開2019」の報道陣向け先行公開で、AI(人工知能)技術を使って白黒映像を自動でカラー映像に変換するシステムを展示した。一般公開(5月30日〜6月2日)では、その場で撮影した白黒写真をAIで自動着色する体験ができる。

photo 展示ブースで撮影した白黒画像(写真=左)と、自動着色したカラー画像(写真=右)

 白黒フィルムで撮影した映像を自動的にカラー映像に変換する技術。NHKが持つ2万本の番組映像を使い、教師あり学習の手法で画面に映っている物の色をAIに学ばせた。これまでは、着色を担当するスタッフが数日かけて白黒画像を1フレームずつ手作業で着色していたが、AIを使えば30秒〜5分程度に短縮できるとしている。

 白黒映像の着色は、時代考証の専門家による確認が必要になるため何度も修正作業が発生するが、これも効率化できる。またAIは物体の境界を学習しているため、色を部分的に修正することも容易に行えるという。

 実際にデモ展示を体験してみると、実行ボタンをクリックして3秒ほどでカラー画像が完成し、白黒画像に淡い色が付いた。ワンクリックで済むので専門知識がなくても利用できる。説明員は「空や山などのオブジェクトはほぼ完璧に着色できるが、服や看板などは難しく、人の手で色を直す必要がある」と話す。

photo ジャケットの色を青色に修正した

効率化による弊害も

 効率化による弊害も起きている。手作業のときと比べて作業時間が短縮し、柔軟な修正にも対応可能になったため、完成間際の急な修正依頼が増えたというのだ。着色作業をするスタッフが作業の簡略化を喜ぶ一方で、番組制作全体を管理するディレクターの負担が増えるケースもあるという。AI活用を進める中で課題も見えてきたようだ。

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