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AIが肌診断、ロボットアームが商品選び――化粧品「SK-II」の新型店は、販売員が“グイグイ来ない”(1/2 ページ)

» 2019年06月06日 15時33分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 化粧品ブランド「SK-II」(エスケーツー)を展開するP&Gプレステージは6月6日、テクノロジーを活用した体験型ショップ「SK-II Future X Smart Store」(東京都渋谷区)を報道関係者向けに公開した。6月7日〜8月12日の期間限定で営業する。AIやロボットアームが肌の診断や接客を担当し、販売員は“あえて一歩下がる”ことで、顧客が買い物をしやすい雰囲気を醸成する狙いだ。

 化粧品業界では、販売員が接客やアドバイスをする中で、顧客が「絶対に買わないといけない」とプレッシャーを感じたり、必要以上に商品を買ってしまったりするケースがあるという。テクノロジーの力でこれらを防ぎ、顧客がリラックスして買い物ができる状況を作る。

 店内には若手社員が常駐するが、顧客のニーズに応じて相談に乗る程度の接客にとどめ、「心地の良い距離を保つ」としている。

photo ロボットアームによる接客

AIを活用、約3分で肌診断

 AIによる肌状態の分析「マジック スキャン」ができるブースには、鏡台が5つ並べられている。鏡の裏側には顔写真を撮影するカメラが、手元にはタッチスクリーンで操作できるディスプレイが配置されている。

 来店者が鏡台の椅子に座り、肩乗せスピーカーを首に掛けると、操作のガイダンスが流れる。音声に従って画面上に年齢を入力し、「毛穴・テカリ」などの選択肢から肌の悩みを選ぶと、カメラが起動して顔全体をスキャン。3分間ほどかけて、シミやキメなどの状態を分析し、目・頬・口のエリアのコンディションを3段階で評価する他、“肌年齢”を診断する。

 詳細は非公開だが、診断を担当するAIは、さまざまな肌状態の女性の顔写真を数多く機械学習している。分析の際にはクラウドは活用せず、店内のサーバを使用する。顧客が気軽に利用できるよう、店内で取得した写真やデータは学習には使用しない方針。

photo AIによる測定の様子

 測定結果を表示した後は、おすすめ商品の紹介画面に遷移。顧客の肌状態や悩みに応じて、SK-IIシリーズの中から最適なものを2種類レコメンドする。ひげが濃い場合などを除き、男性の診断にも対応する。

 記者(27歳男性)が測定すると、肌年齢は26歳だが、目元の肌の状態が不安定なため、目元に潤いを与える「R.N.A.パワーアイクリーム」がおすすめとの結果が出た。

 かつてP&Gプレステージが同様の企画を行った際は、顧客の肌を同世代と比較した上でスコアリングする仕組みだった。これも顧客にプレッシャーを与えると判断し、個人の状態を分析するものに仕様を変更した。

photo 記者の測定結果

ロボットアームが化粧品を手渡し

 ロボットアームによる接客ブースには、化粧品が並べられたカウンターの中に「Yumi」(ユミ)と名付けられたアームが備え付けられている。合成音声による発話にも対応し、近づくとあいさつなども行う。

 顧客が備え付けのタッチスクリーンを操作し、乾燥、小じわ・ハリ、シミ・くすみ、毛穴――などの選択肢から肌の悩みを選ぶと、アームが突然反転。棚に置かれた5種類の商品の中から、顧客に合ったものを1つつかみ、手元まで持ってくる。その人間顔負けのキビキビとした動きに、報道陣からは驚きの声が上がっていた。

photo ロボットアームが商品をつかむ様子
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