永井教授が所属する情報環境機構が、プロジェクトの運営委員会を組織し、クラウド移行の方針を検討。業務系システムなどは外部クラウド(IaaS)へ移行する、グループウェアやメールはSaaS型サービスを利用する――といった具合だ。
業務系システムの中でも、マイナンバーや健康情報などセンシティブなデータを取り扱うものは、従来通りオンプレミスで運用する方針にした。「学内でコンセンサスが取りにくいと判断し、見送った」(永井教授)
クラウドベンダーに求める仕様を確定した上で、18年ごろ一般競争入札を実施。その結果、業務系システムにはAWS、情報系システムはGaroon、kintone、G Suiteを採用した。
業務系システムは、関東3カ所のデータセンターに分散収容。データセンターと京都大学の間は、学術情報ネットワーク「SINET」を利用してL2-VPNで接続し、大学内のオンプレミス環境と同様に使える仕組みを整えた。永井教授は「現実的なBCP/DR対策が見えてきた」と胸を張る。
教職員用グループウェアは、Garoon、kintone、G Suiteを同じ認証システム(Shibboleth)で連携させた。
GaroonとG Suiteを同期させ、独自開発したスマートフォンアプリでスケジュールを確認できる仕組みも導入。教員がGmailやGoogleカレンダーを「好き勝手に」使っていたことを踏まえ、こうしたアプリを導入すれば「(教員によく使ってもらえる)キラーアプリになる」と考えたという。
永井教授は「AWS、Garoon、kintone、G Suiteの導入を同時に進めたこともあり、会議に膨大な時間を要した」と振り返る。「各システムが密接に連携しているので同時進行が必要だったが、プロジェクトのコアメンバーは6人だったので無理があった。リリース直前は徹夜もした」
また、クラウドベンダーと京都大学で意見をすり合わせながらプロジェクトを進めたが、リリース直前はコミュニケーションがおろそかに。思い込みが原因で作業のやり直しが発生し、リリースが約1カ月遅れる事態になったという。永井教授は、クラウドベンダーと大学の相互で課題を認識した上で、やるべきことを明確にすることが重要と話す。
永井教授は「今後も外部のクラウドサービスを積極的に利用したい」と意気込む。今回は、業務系システムと情報系システムをクラウドへ移行したが、研究用のサーバなどでもノウハウが生かせると考えている。
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