企業におけるクラウドの採用が進んでいる。とはいえ、既存のオンプレミスシステムのクラウド化は、まだそれほど進んでいない。そう言うのは、Think Summit Tokyoの開催に併せ来日したIBMのハリッシュ・グラマ氏(IBMクラウド・プラットフォーム担当ジェネラルマネジャー)だ。
基幹系などのミッションクリティカルなシステムをクラウド化するのは、それほど簡単ではない。結果的に、一部の新しいシステムは最初からパブリッククラウドで構築できても、既存システムの多くはプライベートクラウドで動かさざるを得ない。さらに容易に利用を始められるSaaSも利用する。調査会社によれば、企業の94%が複数のクラウドサービスを利用していると答えており、その内の67%が複数のパブリッククラウドを利用しているという。
ハイブリッドクラウド、マルチクラウドの状況における課題の1つが、特定クラウドに縛られることなく自由に移行できるようにしたいということ。その上で複数クラウド間のスムースな接続も必要だ。さらに「複数クラウド上のアセット管理も重要」とグラマ氏。購入しているソフトウェアのライセンスがそのままではクラウドで利用できず、新たな契約でコスト上昇につながる課題もある。
一方でPaaSを使えば、クラウドネイティブなアプリケーションを素早く作れる。とはいえ、既存のシステムをPaaSに移行しようとすれば、結局はアプリケーションのコードを書き換えることになる。PaaSを使って移行できるのは既存システムの20%程度、残りはレガシーなまま残ることになるとグラマ氏は指摘する。手間がかかるとはいえ、残り8割もいずれはクラウド化する。その際にアプリケーションは、Kubernetesでコンテナ化するのが現実的だ。
IBMではアプリケーションのコンテナ化をサポートするだけでなく、自社で提供するミドルウェア全てをコンテナ化している。これはクラウドネイティブなアプリケーションを作りやすくするだけでなく、アプリケーションをハイブリッドクラウド、マルチクラウドの環境下でどこにあっても柔軟に動かせるようにするためだ。
他のクラウドベンダーは、Kubernetesのコンテナサービスを提供していても、ミドルウェアは独自サービスとして展開しているところが多い。IBMのようにミドルウェアもコンテナ化していないと、ミドルウェアに依存するところがあればそのクラウドサービスにロックインされかねない。ミドルウェアまでコンテナ化し本当にどこでも動かせるようにするところは、IBMのクラウド戦略の価値だとグラマ氏は主張する。
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