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デジタルでも勝ちたい 「少年ジャンプ」編集部の野望(1/2 ページ)

» 2019年07月02日 07時00分 公開
[村上万純ITmedia]

 「少年ジャンプがこれまで作ってきたシステムを、いまの時代に合わせて生まれ変わらせたいんです」

 集英社・週刊少年ジャンプ編集部の籾山悠太さんは、「少年ジャンプ+」「ジャンプルーキー!」など、これまでジャンプに関わるWebサービスやアプリを数多く立ち上げ、漫画のデジタル化に積極的に取り組んできた。

 紙の雑誌や書籍が売れなくなったといわれて久しいが、日本で最も売れている漫画雑誌「週刊少年ジャンプ」も例外ではない。その発行部数は1995年の653万部をピークに減少し、いまでは200万部を下回る。

 籾山さんは、「作家と編集者で面白い漫画を作ることに集中していれば良かった幸せな時代は残念ながら終わってしまいました。しかし、こうした時代の変化は決してネガティブなことだけではありません」と話す。

 そこで出てきたのが、冒頭のせりふだ。籾山さん自身、漫画配信アプリや漫画投稿サービスなどを手がける中で、紙の時代には見られなかった新たな才能(作家)が集まり、作品が多様化してきた実感があるという。

 デジタル時代のジャンプは、どのように生まれ変わるのか。これまでの取り組みや今後の展開について聞いた。

ジャンプ 集英社・週刊少年ジャンプ編集部の籾山悠太さん

ジャンプの特徴は「作家同士の競争」

 才能ある作家を集めて面白い作品を生み出し、良質な読者を集める――籾山さんは、そんなエコシステムを作ろうと模索している。その例の1つが、漫画配信アプリ「少年ジャンプ+」だ。週刊少年ジャンプの過去作品だけでなく、少年ジャンプ+発のオリジナル漫画も数多く読むことができるとあって、累計ダウンロード数は1000万を突破。週間アクティブユーザーは250万人以上いるという。

 アプリのトップページには閲覧者数ごとに作品がランキング形式で並んでおり、「その日読まれている人気作品」がひと目で分かる。これまで閲覧者数は表示していなかったが、ここ数カ月でユーザーインタフェースを変更し、作品ごとの閲覧者数とコメント数を表示。他の漫画アプリでも人気作品ランキングはあるものの、閲覧者数まで公開しているところは少ないだろう。

ジャンプ 漫画配信アプリ「少年ジャンプ+」

 籾山さんは「ジャンプの特徴である“競争”の要素を取り入れました」と話す。紙の週刊少年ジャンプでは、読者アンケートの結果で連載の継続や掲載される順番などが決まる。そうした読者を巻き込んだ形での“競争”をアプリ上でも再現した。トップページの上部は自動更新で、シンプルに「その日読まれている人気作品」が上から順に並ぶ設計にしている。

 「リアルタイムで閲覧者数を表示すると、作家さんも刺激になります。(曜日ごとに更新される作品が決まっているため)競争するライブ感を作ることで、各曜日の看板作品が生まれるのではという思いもあります」(籾山さん)

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