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デジタルでも勝ちたい 「少年ジャンプ」編集部の野望(2/2 ページ)

» 2019年07月02日 07時00分 公開
[村上万純ITmedia]
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 読者アンケートの結果をすぐに誌面作りに反映する手法は、いまも生きている。アプリ上では、読者コメントだけでなくさまざまなデータをリアルタイムで取得できる。編集部では閲覧数だけでなく、完読率や併読率なども見ている。

 例えば、読者がある作品を3話まで読んでくれれば、その先まで読んでくれるかどうかをある程度予測できるという。いろいろなデータを分析できるようになったが、籾山さんは「もっとシンプルで分かりやすい、ジャンプっぽさがある指標がほしいですね」と話す。いま重視しているのは閲覧者数だが、それに代わる指標を考えたいという。

 コンテンツ作りの面では、籾山さんは「ジャンプらしい王道作品を生み出したい」と意気込む。SNSが普及して個人の嗜好(しこう)が多様化した現代は、マスに刺さるコンテンツを生み出すことが難しい。籾山さんは、デジタル発の大ヒット作がまだ生まれていないことをもどかしく感じていると話す。

 「『SLAM DUNK』『幽☆遊☆白書』『DRAGON BALL』のような、特定の世代なら誰もが知っているような漫画を生み出したいですね。パーソナライズして作品を表示した方がアプリのユーザーは定着すると思いますが、誰が読んでも面白い漫画を作家と作りたいんです」(籾山さん)

漫画界全体を危機から救いたい

 ジャンプでは、社外との取り組みも強化している。今年4月には、講談社の「週刊少年マガジン」とコラボレーションし、ジャンプとマガジンで連載する作品を無料で読めるWebサイト「少年ジャンマガ学園」を学生向けに公開して話題になった。

 ジャンプに関連した新しいアプリやWebサービスの企画を募集する「アプリ開発コンテスト」の開催も今年で3度目だ(7月末まで募集中)。コンテスト第1期入賞企画で、アプリ開発企業ミライアプリと集英社が共同で企画・制作したアプリ「マワシヨミジャンプ」は、漫画を“拾って回し読みする”もの。位置情報と連携し、マップ上で近くに表示された電子書籍を“拾って”読むことができる。

ジャンプ 「マワシヨミジャンプ」

 「電車の網棚に置かれた漫画誌を手に取ることで、知らなかった作品を読んで好きになるような、かつてあった体験を現代に新たに蘇らせたい」というコンセプトで開発されたものだ。

 これまでアプリ上で「マワシヨミ」された回数は累計250万回を超えたという。アプリ内でたくさんマワシヨミされた電子書籍の売り上げがアップした例もあるようだ。

 籾山さんは「(マワシヨミジャンプは)編集部にはなかった発想。アプリ開発コンテストの企画は、ジャンプに関係しないものでも大丈夫です。集英社は堅苦しいというイメージがあるかもしれませんが、これまで仕事をしたことがないようなベンチャー企業などとも組んで、漫画界全体を危機から救いたいと前向きに動いています」と語った。

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