では、AIは洗剤の共起語(ある単語が出現したときに、一緒に利用される単語)をどのように洗い出しているのでしょうか。
TISの小林賢一郎さんは「コピーライター出身の八幡さんにどのような言葉があったら面白いかを考えてもらいました。それをAIで再現できるよう、かなり細かくチューニングしています」と話します。単なる「共起のロジック」でアルゴリズムをつくると平凡になってしまうため、プロのコピーライターを教師データにしたのです。
しかし、AIが「量」で人間を圧倒するのは理解できますが、「質」はどうなのでしょうか。アイデア出しに正解はないようにも思います。
「出てきた言葉が正解かどうかは、シチュエーションで変わると思います」と小林さんはいいます。「将来的にはシチュエーション単位で、どういうゴールに収束させるかを見なければならないでしょう。現在は、同じ単語やフレーズができるだけ出ないようにし、日本語として文法的に最低限おかしくないものを生成する、といった仕組みをつくっています」(小林さん)
AIが表示した結果を解釈し、言葉を選びとるのは人間の仕事です。例えば単語同士を結合する機能を使えば、「洗剤ビフォーアフター」「マニア級洗剤」「洗剤と体調」など、いろいろな切り口のフレーズが生成されます。八幡さんは「うちのコピーライターに使わせると、言葉の乱れが刺激になって気持ちいいと言っていましたね」と笑います。
AIブレストスパークは、博報堂の若手社員が「クリエイティブとAIを掛け合わせると面白いのでは?」と考えたことから開発が始まったそうです。
元博報堂の赤松範麿さんは、「普通の人は、たくさんアイデアを考えてと言われても、似たような案を3つくらいしか出せません。しかし、プロのコピーライターなら固定観念にとらわれず100案くらい出せてしまう」と話します。そうしたプロの考え方や発想方法をシステム化できないかと考え、AIブレストスパークが生まれました。
システム開発を担ったTISの場合は、クリエイティブな活動をする人の「働き方改革」を念頭に置いていました。
「良いアイデアを出すには、時間がかかります。AIを使うことで、短い時間で質の高い議論をしてほしいと考えています」(小林さん)
博報堂グループでは50〜60人のクリエイターがAIブレストスパークを使っているそうです。会議に参加するメンバーに忖度(そんたく)せずにアイデアを出せるのも、AIならではのメリットでしょう。
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